未使用品 希望の青い鳥 カラスが表す神の愛 《修道士が手作りしたエマイユ製ペンダント 24 x 15 mm》 テゼの作品 革紐付 フランス 現代



 テゼ(Taizé ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏ソーヌ=エ=ロワール県)はフランス東部の小さな集落で、クリュニーから北におよそ十キロメートル、パレ=ル=モニアルから東北東におよそ五十キロメートルの距離にあります。この村の北半分に広がっているのが、ラ・コミュノテ・ド・テゼ(仏 La Communauté de Taizé テゼ共同体)と呼ばれる修道会あるいは宗教的共同体です。テゼ共同体はエキュメニカルな修道会で、キリスト教のあらゆる教派から年間五万人以上が訪れ、創立以来の訪問者は三百万人を超えます。





 テゼ共同体は修道士が制作する工芸品や絵画、陶器、本、クッキーなどを販売することで維持されています。本品ペンダントもそのような物品のひとつで、鳥を模(かたど)る銅片に不透明色ガラスのフリットを載せ、高温の窯で焼成しています。ペンダントは修道士によりひとつひとつ手作りされています。

 エマイユは両面に分厚く施されています。同色のエマイユは融点も同じであるゆえに両面に施すのが難しいですが、本品はそれぞれの面で異なる色を使用し、両面とも使えるように綺麗に仕上げています。エマイユの胎は銅ですが、表面はガラスですので、金色の環を紐に取り換えるなどすれば、金属アレルギーがある方にも本品は問題なくお使いいただけます。





 本品のエマイユは一方の面が白と二色の、もう一方の面が黒です。白と青の組み合わせはバロック期以降の聖母像を思い起こさせます。中世のキリスト教的解釈において、「雅歌」の花嫁は聖母マリアの象徴とされています。新共同訳により、いくつかの章句を「雅歌」から引用します。

      恋人よ、あなたは美しい。あなたは美しく、その目は鳩のよう。    (1: 15)
      岩の裂け目、崖の穴にひそむわたしの鳩よ。姿を見せ、声を聞かせておくれ。お前の声は快く、お前の姿は愛らしい。    (2: 14)
      恋人よ、あなたは美しい。あなたは美しく、その目は鳩のよう。ベールの奥にひそんでいる。髪はギレアドの山を駆け下る山羊の群れ。    (4: 1)
      眠っていても、わたしの心は目覚めていました。恋しい人の声がする、戸をたたいています。「わたしの妹、恋人よ、開けておくれ。わたしの鳩、清らかなおとめよ。わたしの頭は露に、髪は夜の露にぬれてしまった。」    (5: 2)
      わたしの鳩、清らかなおとめはひとり。その母のただひとりの娘。産みの親のかけがえのない娘。彼女を見ておとめたちは祝福し、王妃も側女も彼女をたたえる。    (6: 9)


 これらの章句において、花嫁あるいは聖母は愛らしい鳥(鳩)に譬えられています。




(上) カニヴェ 《マリアを信心して味わう清らかなる天上の香り》 (シャルル・ルタイユ #7) 貞潔な女性の魂が、生命の水を飲む鳥の姿で描かれています。


 詩人メーテルランク(Maurice Maeterlinck, 1862 - 1949)の「青い鳥」("L'Oiseau bleu", 1907)が希望の象徴であることはよく知られています。後述するように、本品のもう一方の面が連想させるカラスも希望の象徴ですので、本品はいずれの面にもこの意味が籠められたペンダントといえます。


 色や種類にかかわらず、鳥は魂の象徴です。青は水の色ですから、青い鳥は生命の水を飲む魂を思い起こさせます。「ヨハネの黙示録」二十一章六節において、イエスは幻視するヨハネに対し、次のように語っておられます。ネストレ=アーラント二十六版に基づくギリシア語原文、及び新共同訳によりこの箇所を示します。

      Γέγοναν. ἐγώ [εἰμι] τὸ Ἄλφα καὶ τὸ ὦ, ἡ ἀρχὴ καὶ τὸ τέλος. ἐγὼ τῷ διψῶντι δώσω ἐκ τῆς πηγῆς τοῦ ὕδατος τῆς ζωῆς δωρεάν.     事は成就した。わたしはアルファであり、オメガである。初めであり、終わりである。渇いている者には、命の水の泉から価なしに飲ませよう。






 もう一方の面は漆黒のガラスで被われた黒い鳥です。黒い鳥にもいろいろな種類がありますが、良い象徴であるのはやはりカラスでしょう。カラスは希望の象徴、鋭い洞察力の象徴、神の愛の象徴、信仰の象徴です。

 「創世記」六章から八章の記述によると、神は堕落した人間を地上から一掃するために洪水を起こすことを決心しましたが、義人ノアには巨大な箱舟を作らせて、ノアとその家族、七つがいずつの清い動物、一つがいずつの清くない動物、七つがいずつの鳥をこれに乗せ給いました。豪雨が四十日間降り続いて地上は深い水に被われ、百五十日のあいだ洪水が続きました。その後ようやく水が減り始め、箱舟は高峰アララト山に止まります。さらに数十日が経った後、ノアは最初にカラスを放ち、次に七日おきに三回にわたってを、箱舟から放しました。二度目に放たれた鳩はオリーヴの若枝を咥えて戻り、三度目に放たれた鳩は箱舟に戻りませんでした。さらに数週間あるいは数か月が経ったとき、神はノアと動物たちに箱舟から出るように命じ、ノアは祭壇を築いて感謝の生贄を捧げました。


 13世紀半ばのモザイク画


 「創世記」八章六節から十二節を新共同訳により引用します。

     神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーヴの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。





(上) 聖ベネディクトゥス生誕千四百年記念メダイユ 直径 36.0 mm 聖人像の向かて右下にカラスがいます。


 上に引用した「創世記」において、ノアは最初にハトではなくカラスを放っていますが、これはカラスが優れた視力を持つためです。実際、カラスは視力においても知能においても他のほとんどの鳥よりも優れており、鋭い洞察力を象徴する鳥となっています。このような特性ゆえに、カラスは希望を擬人化した図像のアトリビュートになり、さらにはカラス自体が希望の象徴と看做されるようになりました。

 ヌルシアの聖ベネディクトゥスは死にゆく者の守護聖人ですが、聖ベネディクトゥスの様式化された図像には、毒入りパンを聖人の許(もと)から運び去ったカラスが描かれます。この伝説とカラスの図像はこの鳥が有する洞察力を表すとともに、死にゆく者にとっての希望、あるいはプシュコポンポス(希 ψυχοπομπός 魂の導き手)としての役割を表します。カラスはエジプトの隠修士聖パウルス(St. Paul + c. 341)、及び聖パウルスと親交のあった聖アントニウス(St. Antonius, c.  251 - 356)の許に、日々パンを運んできたと伝えられています。




(上) フランスの子供向け小聖画 「カラスのことを考えてみなさい」 当店の販売済み商品


 「ルカによる福音書」十二章二十四節から三十節において、イエスは弟子たちに神の摂理を信頼せよと説いておられます。ネストレ=アーラント二十六版に基づくギリシア語原文、及び新共同訳により、この箇所のテキストを示します。

  24 κατανοήσατε τοὺς κόρακας ὅτι οὐ σπείρουσιν οὐδὲ θερίζουσιν, οἷς οὐκ ἔστιν ταμεῖον οὐδὲ ἀποθήκη, καὶ ὁ θεὸς τρέφει αὐτούς: πόσῳ μᾶλλον ὑμεῖς διαφέρετε τῶν πετεινῶν. ..  烏(カラス)のことを考えてみなさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、納屋も倉も持たない。だが、神は烏を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりもどれほど価値があることか。
  25 τίς δὲ ἐξ ὑμῶν μεριμνῶν δύναται ἐπὶ τὴν ἡλικίαν αὐτοῦ προσθεῖναι πῆχυν;   あなたがたのうちのだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか。
  26 εἰ οὖν οὐδὲ ἐλάχιστον δύνασθε, τί περὶ τῶν λοιπῶν μεριμνᾶτε;   こんなごく小さな事さえできないのに、なぜ、ほかの事まで思い悩むのか。
  27 κατανοήσατε τὰ κρίνα πῶς αὐξάνει: οὐ κοπιᾷ οὐδὲ νήθει: λέγω δὲ ὑμῖν, οὐδὲ Σολομὼν ἐν πάσῃ τῇ δόξῃ αὐτοῦ περιεβάλετο ὡς ἓν τούτων.   野原の花がどのように育つかを考えてみなさい。働きもせず紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。
  28 εἰ δὲ ἐν ἀγρῷ τὸν χόρτον ὄντα σήμερον καὶ αὔριον εἰς κλίβανον βαλλόμενον ὁ θεὸς οὕτως ἀμφιέζει, πόσῳ μᾶλλον ὑμᾶς, ὀλιγόπιστοι.   今日は野にあって、明日は炉に投げ込まれる草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなたがたにはなおさらのことである。信仰の薄い者たちよ。
  29 καὶ ὑμεῖς μὴ ζητεῖτε τί φάγητε καὶ τί πίητε, καὶ μὴ μετεωρίζεσθε:   あなたがたも、何を食べようか、何を飲もうかと考えてはならない。また、思い悩むな。
  30 ταῦτα γὰρ πάντα τὰ ἔθνη τοῦ κόσμου ἐπιζητοῦσιν: ὑμῶν δὲ ὁ πατὴρ οἶδεν ὅτι χρῄζετε τούτων.   それはみな、世の異邦人が切に求めているものだ。あなたがたの父は、これらのものがあなたがたに必要なことをご存じである。



 この部分において、カラスは野の白百合(希 τὰ κρίνα 二十七節)と同様に、被造物を守り給う神の愛を象徴しています。カラスと白百合は信仰の象徴、すなわち神の節理に対する信頼の象徴でもあります。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。







 本品はテゼの修道士による完全な手作り品です。テゼ共同体自身はペンダントの意匠について詳しい説明をしていませんが、古代神話からユダヤ教を経てキリスト教に引き継がれた象徴性を考えるとき、本品は数千年にわたる思想史と美術史を前提に、二十一世紀に至って産み出された美しい品物であることがわかります。

 本品エマイユの胎(下地となる金属)はおそらく銅ですが、表面はガラスですので、金色の環を革紐などに取り換えれば、金属アレルギー体質の方にも問題なくお使いいただけます。上に示した着用例の写真では金色の環をそのまま使用していますが、モデルはチェーンではなく革紐で本品を着用しています。この革紐は本品に無料で付属します。





本体価格 5,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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