簡素な銀無垢クルシフィクス フランス製アンティーク 26.0 x 14.0 mm
フランス 19世紀後半から20世紀初頭
一切の装飾を排したシンプルな十字架に、打ち出し細工のコルプスを取り付けた簡素なクルシフィクス。フランスにおいて 800シルバーを示す「蟹」のポワンソン(ホールマーク 貴金属検質所の印)が、十字架の上部に刻印されています。
クロスやメダイ等、信心具のデザインには、その細部に至るまで、古(いにしえ)の図像学的伝統に育まれた豊かな象徴性が秘められており、それを読み解くのは、信心具を鑑賞する楽しみの一つです。しかしながら、ひとつの信心具に取り入れることができる象徴的図像の数には、どうしても限りがあります.。それゆえ、信心具のデザインに無限に豊かな意味を担わせようとするならば、それぞれ特定の意味のみを表す図像を数多くちりばめるのではなく、却って一切の象徴的装飾を排し、できるだけ簡素なデザインにするのが良い方法です。
クレルヴォーのベルナールの理念に従って建設されたシトー会の修道院建築、とりわけ「プロヴァンスの三姉妹」と呼ばれ、いずれも聖母に捧げられたシトー会の修道院群、そのなかでも特にル・トロネ修道院は、あらゆる装飾を排し、簡素さを極限まで推し進めた美で知られますが、如何なる装飾も持たないこの建築は、「特定の意味内容を指示する装飾を持たない」というまさにそのことによって、神の内なる無限の豊かさを、飾り気のない石壁に見事に投影しています。
【参考写真・プロヴァンスの三姉妹 les trois sœurs provençales】
ル・トロネ修道院 abbaye du Thoronet
セナンク修道院 abbaye de Sénanque
シルヴァカン修道院 abbaye de Silvacane
このクルシフィクスに見られる簡素さについても、同じことがいえます。クルシフィクスが表すのは、言語を絶する神の愛です。しかるに神の愛は、地上の如何なる愛よりも強く烈しく、また人間の知性には別々のものとして把捉される諸々の属性、すなわち神の生命、神の完全性、神の善性、神の永遠性、神の不変性等と完全に融け合い、区別することができません。このように人間の知性認識能力を超え、言語によっても、図像によっても、他のいかなる手段によっても表現することが不可能な神の愛を、それでも表現しようとするならば、特定の意味内容のみを指し示すあらゆる装飾を削ぎ落とし、究極の簡素さによって、無限に豊かな神の本質を表そうと試みるしかないのです。
こうして本品は、無限に豊かな神の愛を、あらゆる装飾を排したその形態に投影します。ここに見られる美術思想は、本品が制作された時代よりもおよそ50年後、20世紀中頃に力を得たミニマリズムの思想と共通しています。銀は信心具に使われる最も高級な素材です。めっきではなく銀無垢製の本品には、簡素な意匠ながらも最も善きもので神を賛美しようとする敬虔な信仰心が現れています。
本品は百年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、保存状態は良好です。特筆すべき瑕疵は何もありません。コルプスやクロスの角(かど)が磨滅して、真正のアンティーク品ならではの優しい丸みを獲得しています。
本体価格 8,800円 販売終了 SOLD
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