点
PUNCTUM, point, der Punkt
(上) Vasily Kandinsky,
"Free Curve to the Point - Accompanying Sound of Geometric Curves", 1925, Ink on paper, 40 x 30.2 cm, the Metropolitan Museum of Art, New
York
点は幾何学において基本となる最小の要素であるとともに、哲学と宗教においても「万物の始原」に関する象徴性を担います。
【アレクサンドリアのクレメンスにおける「神の象徴としての点」】
古代以来のキリスト教思想によると、人間の知性が神の本質、神の属性を捉えることはできません。後世に最も強い影響を及ぼしたギリシア教父のひとり、アレクサンドリアのクレメンス(Clemens Alexandrinus, Κλήμης Ἀλεξανδρεύς, c. 150 - c. 215)は、主要著作のひとつ「ストロマタ」("
STROMATA")第五巻十一章で、神の不可知性を幾何学における「点」に類比しています。
クレメンスによると、物体から空間的広がりを捨象すれば、空間内のある位置に、点が残ります。空間内のある場所に存在する点は、「モナス」(希 μονάς 単位、一)に比することができます。しかるに空間内の点からさらに位置を捨象すれば、如何なる属性も有さない純粋な「点」のみが残ります。このようにして「モナス性」「一性」の概念が得られます。
神はこの「モナス性」「一性」と類比的に考えることができます。物体及び非物体的なあらゆる被造的有(被造物である存在者)から、形態や運動、位置など、あらゆる属性を捨象することにより、人間の知性は神が「どのような方でないか」を知り、神の本性・属性に近付いてゆきます。
造物主である神はすべての被造的有の第一原因(τὸ πρῶτον αἴτιον)であり、空間と時間のみならず、あらゆる名称と概念を超越する御方であるゆえに、人間の知性が神について知ろうとすれば、神が「どのような方であるか」を知ることはできず、被造物のあらゆる属性を捨象することによる以外、神に近づく道はありません。このような意味において、図形からあらゆる広がりのみならず位置をも捨象した「点」は、神に類比して考えることができるのです。
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