1908年に創立された南フランスケネルクラブのブロンズ製メダイユ。30周年クラブ展の際に製作されたものです。
表(おもて)面には上部が半円アーチになった城館の扉の前を、二頭の犬を連れて狩りに出掛ける人物が浮き彫りにされています。この人物は城館の主人たる領主ではなく、犬を扱う係の下男でしょう。角笛を手に、早く狩り場に行こうと逸(はや)る犬を抑えつつ、騎乗して待つ主人のもとへと急いでいます。
最上部にフランス語で「南フランスケネルクラブ」(Société canine du Midi) の文字が彫られ、その左側に同クラブの紋章が浮き彫りにされています。犬を連れた人物の脚の後ろに、20世紀前半に活躍したフランスのメダイユ彫刻家、ジョルジュ・コントー
(Georges Contaux, 1891 - 1984) のサインが刻まれています。
裏面にはマルセイユ市民に親しまれる「ボンヌ・メール」(Bonne Mère 優しい聖母様)、ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドのバシリカ (La Basilique Notre-Dame de la Garde) が浮き彫りにされています。バシリカはマルセイユ市街を見はらす丘の上に建っており、このメダイユでは鐘楼側から見上げるように彫られています。鐘楼の頂上には聖母子像「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」(Notre-Dame
de la Garde 守護の聖母)が据えられ、マルセイユの街を見守っています。
裏面の下半分には「30周年クラブ展」(Exposition du trentenaire)、「一等」(1er prix) の文字が記され、その上にはマルセイユの紋章(シルバーの盾にブルーの十字架)に王冠を載せ、両側に中世風のイルカを配したものが浮き彫りにされています。
裏面の最上部にはオリーヴとローリエ、最下部にはぶどうがあしらわれています。これらはいずれも象徴性に富む植物であるとともに、ミディ・ド・ラ・フランス (le Midi de la
France)、すなわちオクシタニアの重要な農産物です。
メダイユの縁には錨のマークと「ブロンズ」(BRONZE) の文字が刻印されています。
メダイユはたいへん良好なコンディションで、特筆すべき問題はありません。南フランスの明るい日差しを感じさせる作品に仕上がっています。