第一部 初期地球の環境変化と、生命の誕生

5. 環境の酸化と、酸素呼吸による進化の加速

 しかし地球に鉄の核ができて地球全体が大きな磁石になり、磁力線のバリアで太陽風を跳(は)ね返すようになると、生物は浅い海にも住むようになった。

 

 オーロラ

 

 

 浅い海に最初にやって来たのは、シアノバクテリアという細菌だ。日本語では、藍藻(らんそう)または藍色細菌(らんしょくさいきん)という。シアノバクテリアは光合成(こうごうせい)によって酸素を作り始めた。光合成は植物が光エネルギーを利用し、二酸化炭素と水から、酸素と養分を作る働きだ。

 

 シアノバクテリアが大量の酸素を出したせいで、24億5000万年前には、大気の酸素濃度(空気中の酸素の濃さ)が、それ以前の一万倍以上になった。

 

シアノバクテリアはいまも生きていて、ストロマトライトという集団を作ることがある。

ストロマトライトはギリシア語で「層の岩」という意味で、縞模様の化石になる。下の写真はオーストラリア西端、シャーク・ベイにある現生のストロマトライトだ。

 


 酸素からは、
活性酸素という毒物ができる。活性酸素は、放射線と同じように、DNAを傷つけて生物を死なせてしまう。シアノバクテリアが生まれる前の生物は、酸素があると死んでしまう嫌気性細菌だった。この時代の生物(嫌気性細菌)に とって、酸素が増えるのはとても困ったことだった。しかし長い時間が経つうちに、活性酸素を分解する酵素(こうそ)を持つ好気性細菌が現れた。好気性細菌は、酸素を吸って生きる生物の祖先だ。

 

 シアノバクテリアが大気中の酸素を増やした時代よりも後に、いろいろな生物が好気性細菌から進化して、酸素呼吸でエネルギーを得るしくみを整えていった。これはすばらしいことだった。酸素呼吸をすれば大きなエネルギー(力)を食べ物から取り出せるからだ。

 

 酸素呼吸をするようになったせいで、生物は以前より活発に動けるようになり、進化するスピードがとても速くなった。





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