自由学芸七科
les arts libéraux





 自由学芸7科とは文法、修辞、弁証法、音楽、代数、幾何学、天文学を指します。これらの学芸は自然理性の光あるいは哲学に支配された人間の知恵ですが、そもそも人間に自然理性の光を与えたのは神ですから、自由学芸七科といえども、究極的には神に発する知恵であるということができます。

 ここではランツベルクのヘルラートの著書「歓びの庭」の挿絵、及びシャルトル司教座聖堂西側南入り口の彫刻において、この思想がどのように表されているかを示します。


【ランツベルクのヘルラート「歓びの庭」に見る自由学芸七科の位置付け】

 上に示したのは、アルザスの女子修道院長ランツベルクのヘルラート (Herrad von Landsberg, c. 1130 - 1195) の著書「歓びの庭」("HORTUS DELICIARUM") に見られる自由学芸七科の絵で、「自然理性の知恵たる自由学芸七科といえども、究極的には神からの賜物である」というこの思想をよく表しています。




 上の絵の中央部分を拡大して上に示します。哲学を擬人化した女性フィロソフィアの足元にソクラテスとプラトンがいます。フィロソフィアが手にしている帯には「すべての知恵は神より来たる。為さんと欲する物事を能く為せるは、知恵によりて為す者のみ。」(OMNIS SAPIENTIA A DOMINO DEO EST. SOLI QUOD DESIDERANT FACERE POSSUNT SAPIENTIA *註) と書かれ、周囲の円周上には「種々ある諸天を(自らの)技によりて支配する私、哲学は、我が下にある科目を七つに分ける」(ARTE REGENS DIA QUA SUNT EGO PHILOSOPHIA SUBIECTAS ARTES IN SEPTEM DIVIDO PARTES) と書かれています。言葉はいずれもラテン語です。


【シャルトル司教座聖堂西側、南入り口の彫刻に見る自由学芸七科の位置付け】

 「十二世紀ルネサンス」の時代、西ヨーロッパにおける自由学芸の発展に大きな役割を果たしたのが、シャルトル司教座聖堂を本拠とするシャルトル学派でした。

 シャルトル司教座聖堂西側、南入り口には、タンパンの中央に「知恵の座」(SEDES SAPIENTIAE) の聖母を置き、まぐさ石とタンパンを囲むアーキヴォルトには自由学芸七科を象徴する像が配置されています。



 自由学芸七科は自然の光すなわち理性の働きの発現である哲学に支配されていますが、神の似姿として創造された人間に自然理性を与えたのは神であって、人間の知恵は究極的には神に由来すると言うことができます。この彫刻群において、人間の知恵は神の知恵あるいはロゴスである幼子イエズスと鮮やかな対照を為しつつも、イエズスすなわち神から出て神に戻ることが示されています。


*註 おそらくスペースの関係で、後半部があまりにも簡潔すぎてわかりにくい表現になっていますが、 "Soli homines qui quod desiderant facere possunt, ipsum faciunt sapientia." の意味に解しました。



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