フェーヴ
fèves


 フェーヴはフランス語でソラマメのことですが、1月6日の公現祭(*)に食べる「ガレット・デ・ロワ」(galette des Rois 王のお菓子)に入れる小さな人形または器物の形をしたマスコットのことでもあります。

* 公現祭(エピファニー épiphanie)とは、星に導かれて東方からやってきた三人の博士(または王)が、ベツレヘムで幼子イエスを礼拝したことを記念する日です。エピファニーはギリシア語で神の「顕現」という意味です。神は選民ユダヤ人に対しては旧約聖書の時代から親しく接しておられましたが、イエスがお生まれになったことによって異邦人にも救いがもたらされました。ユダヤ人ではない三博士による幼子イエスの礼拝は、そのことを象徴しています。

 昔のフェーヴは陶磁器でできていましたが、1960年代以降はプラスティックでも作られるようになりました。1980年代には金属製のものも作られましたが、電子レンジに入れることができないためにすぐに廃れて、最近では耐熱性にもすぐれた陶磁器製のものが再び多く作られるようになっています。





 ガレット・デ・ロワは円盤型の大きなお菓子で、このなかに一個、フェーヴが入っています。家族の中でいちばん年少の人がテーブルの下にもぐり、切り分けたお菓子の各部分を誰が取るか、指示します。また切り分けたうちの一切れは「貧者の分」または「神の分」として取り除けられ、家を訪れた人に渡されます。切り分けたガレット・デ・ロワのフェーヴが入っている部分が当たった人は「王」とされ、ガレット・デ・ロワに付いている王冠をかぶって「王妃」を指名し、王妃も王冠をかぶります。


 ガレット・デ・ロワ


 前述のようにフェーヴはもともとソラマメのことです。古来ソラマメは食料としても肥料としても重要でしたし、胎児のような形をしているので、古くから生命の象徴と見なされてきました。古代エジプトでは再生を期待して死者をソラマメ畑に埋葬しましたし、中世ヨーロッパでは結婚式においてもソラマメが象徴的な役割を果たしました。


 ソラマメ


 公現祭にガレット・デ・ロワを食べる慣わしは 15世紀頃に普及しましたが、お菓子の中にはソラマメの実が入れられていました。陶磁器製のフェーヴは 1874年にドイツで初めて作られ、時代を反映したモチーフの人形が作られてきました。飼い葉桶に眠る幼子イエスやマリア、ヨセフ、天使など宗教的なテーマのものも幸運のマスコットとして人気を集めています。

 フランスの子供たちは毎年公現祭が巡ってくるたびにフェーヴをひとつずつ集めて楽しみました。そのようにしてできたコレクションは、次の世代へと受け継がれることもありました。フェーヴには無数の種類があって、大人が集めてもたいへん楽しいものです。フェーヴ集めはファボフィリまたはファヴォフィリ (fabophilie / favophilie) と呼ばれ、フランスでは趣味のひとつとして定着しています。ファボフィリ、ファヴォフィリはネオ・ラテン語ファボフィリア (FABOPHILIA) のフランス語形で、「豆 (ラテン語で FABA)」の「愛好 (ギリシア語で PHILIA)」という意味です。(FAB+O+PHILIA FABはFABAの語幹。Oはつなぎの音。)



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