A. ラーヌ作 よき勧めの聖母と、聖心を示すキリスト 美麗な「愛のメダイ」 歴史性あるアンティーク美術品 直径 19.0 mm


突出部分を除く直径 19.0 mm   重量 4 g

フランス  1920 - 30年代



 「母子の愛」と「神の愛」をテーマに、八十年ないし九十年前のフランスで制作された美麗な「愛のメダイ」。一方の面には「よき勧めの聖母」を、もう一方の面には「聖心を示すキリスト」を、それぞれ端正かつクラシカルな浮き彫りで、立体的に表しています。実物のメダイには写真で見るよりも艶があります。





 よき勧めの聖母はローマの中心部からおよそ四十キロメートル東、ジェナッツァーノ(Genazzano ラツィオ州ローマ県)にある聖画像です。聖母子は、共に戴冠し、天上の栄光に包まれています。聖母は幼子イエスを左腕に抱いていますが、これは聖母が天国においてイエスの右(すなわち、向かって左)に座することを表します。幼子イエスが両腕で母の首元を抱き、母子が顔を寄せて睦み合うさまは、普通の親子と変わらない愛情の通い合いを描いて、見る者に親しみと共感を覚えさせます。





 ジェナッツァーノの聖堂にある「よき勧めの聖母」の実物は、壁から剥離した二次元のフレスコ画です。しかしながら本品は立体的な浮き彫りにより、二次元の聖母子像に三次元性を与え、あたかも生身の聖母子を眼前に見るかのような臨場感を以て再現しています。すなわち本品はジェナッツァーノの聖母子像の単なる複写ではなく、メダイユ彫刻というメディウム(媒体)によって、「よき勧めの聖母」に新たな生命を吹き込んだ芸術品であるといえます。





 本品においては、聖母子を囲むように、ゴシック典礼体のラテン語で、「マーテル・ボニー・コーンシリイー」(MATER BONI CONSILII よき勧めの聖母」)と書かれています。わが国で「よき勧めの聖母」の聖画やメダイを眼にすることはめったにありませんが、フレスコ画によるこの聖母子像は世界中で崇敬を集め、毎年大勢の巡礼者が訪れます。教皇やマザー・テレサも「よき勧めの聖母」を訪れ、執り成しを願っています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。聖母子像の顔の各部、髪や衣文(衣の襞)の表現、幼子の手など、全ての部分において、浮き彫りは数分の一ミリメートル、ないし数十分の一ミリメートルの精度を有します。このような細密さは驚くべき技術ですが、本品の聖母子像は物理的細密性の追求に留まらずに精神性の領域に歩を進め、生身の母子に通い合う活き活きとした愛を見事に形象化しています。





 メダイユ彫刻はルネサンス期のイタリアで発祥しましたが、近代以降はフランスで発達しました。全般的な傾向として、フランスのメダイユはイタリアのものよりも洗練されており、多くの作品に信心具を超えた芸術性が認められます。本品もフランス製メダイユならではの優れた作品であり、二次元のフレスコ画に三次元性を与えた「よき勧めの聖母」の浮き彫りに、その真骨頂が顕れています。

 聖母子を包むマントの向かって右端、メダイの縁に近いところに、オ・ベ・セ(OBC)の文字があります。オ・ベ・セは二十世紀前半のフランスで、数々の美しいメダイユを制作したメゾン(工房)です。





 もう一方の面には聖心を示すキリストを浮き彫りにしています。キリストの聖心は神の愛の形象化であり、その愛は人知を絶する強さゆえに炎を噴き上げ、強烈な光輝を発しています。

 キリストの左側(向かって右側)には、メダイの縁に近いところにメダイユ彫刻家ア・ラーヌ(A. Lanes)のサインがあります。反対側の端には、メダイユ工房オ・ベ・セ(OBC)の刻印があります。





 本品メダイはキリストの面が体に接するように着用されていたらしく、この面で最も突出したキリストの顔が摩滅しています。その反面、顔の突出に守られて、キリストの髪や手、衣文、天上界を表す背景の雲など、細部が良く残っています。

 未使用のまま残り、摩滅や変色等がいっさい無い品物は、保存状態が良いことは確かですが、その一方で歴史性を有しません。歴史性を有しないのであれば、同じ材料を使って再制作した現代のレプリカと区別がつきません。現代のレプリカには目に見えない経年変化も起こっておらず、再現された古美術品の制作当時と同じ状態にありますから、むしろレプリカの方が価値があると言えます。

 これに対して真正の古美術品は、その品物が有する歴史性を、摩滅や変色という形で可視化します。「アンティークの味わい」と呼ばれるのは、古美術品が有する歴史性のことに他なりません。これに加えてメダイユの摩滅は見る者の想像力に自由を与えてくれますし、摩滅の進行を気にせず、気兼ねなく実用できるという長所にも転じます。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。本品の直径は一円硬貨とほぼ同じですが、重量は一円硬貨四枚分あるいは五十円硬貨一枚分に相当し、手に取ると心地良い重みを感じます。サイズを超えた重厚な趣きを持つ一点です。





 本品は八十年ないし九十年前、戦間期のフランスで制作された真正のアンティーク品です。キリストの顔の摩滅は、本品が身に着ける者を守り、身に着ける者とともに第二次世界大戦を潜り抜けた歴史性の証しです。芸術品の水準に到達した浮き彫り彫刻は、もともとの出来栄えの優秀さとともに、歳月を経た品物だけが獲得する落ち着きと趣きによって見る者を魅了します。





本体価格 12,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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