アドルフ・ペナン作 美麗メダイユ 「リヨン・ア・マリ」(リヨンをマリアに捧ぐ) 37.3 x 23.3 mm


上部の環を含むサイズ 縦 37.3 x 横 23.3 mm

フランス  1920年頃



 

 リヨン市街を一望するフルヴィエールの丘に、ロマネスクとネオ・ピザンティン様式を採用した壮麗なバシリカバジリク・ノートル・ダム・ド・フルヴィエール(La Basilique de Notre-Dame de Fourvière フルヴィエールの聖母のバシリカ)が建っています。本品はバシリカを背に立つ聖母の威厳ある姿を浮き彫りにし、「リヨン・ア・マリ」(仏 LYON À MARIE)の文字を刻みます。「リヨン・ア・マリ」とはフランス語で「リヨンをマリアに捧ぐ」という意味です。メダイのフレームは聖母の優美な体のラインと調和して美しい曲線を描き、下半分にはアカンサスの縁取りがあります。





 メダイに刻まれた聖母は、フルヴィエールのバシリカの鐘楼に立つ金色の聖母を写しています。両腕を伸ばして斜め下向きに広げ、眼下に広がるリヨンの町に神の恩寵と祝福を取り次ぐ聖母の姿は、十九世紀における「無原罪の御宿り」の図像表現を継承しています。

 フルヴィエールのバシリカの鐘楼は、老朽化のため、1830年に上部が取り壊され、1849年に再建されました。鐘楼の頂上に立つ金色の聖母は 1852年に完成し、同年12月8日に聖別されました。この日は天候が不順で、聖母像の聖別を同月12日に延期することも検討されましたが、午後になって天候が回復したので聖別式を予定通りに行うことができ、聖母に感謝した市民は家々の窓に明かりを点しました。これが現在まで続くリヨンの祝祭「ラ・フェット・デ・リュミエール」(la Fête des Lumières あかりの祭典)の起こりです。


(下) 鐘楼上に据えられた金色の聖母像。コロタイプによる古い絵葉書。当店の商品です。




 いっぽう聖母の背後に刻まれているバシリカは普仏戦争後に建てられた建物です。1870年に普仏戦争が起こった際、破竹の勢いで進撃するプロイセンはブルゴーニュまで南下しましたが、リヨンに到達することなく退却しました。リヨンの市民はこのときの聖母の庇護に感謝して、バシリカを壮麗な規模に改築しました。現在まで建っているこのバシリカは、1872年に建設が始まり、1896年に献堂されました。





 聖母の足元に伏せるライオンはリヨン市を表すとともに、猛々しい力でリヨンに襲いかかろうとする数々の脅威が聖母によって大人しくされる様をも表しています。

 本品の聖母の足下には、フルヴィエールの丘を様式化するとともに、リヨン市民の信仰心の堅固さ、あるいはリヨンに対する神の変わらぬ庇護を表現する不定形の岩塊が表現されています。この岩塊の前にはライオンが寝そべっています。この「ライオンを従えるマリア」は、オリエントの地母神像を連想させる構図でもあります。

 ちなみにライオン(フランス語でリオン)はリヨン市の紋章にも取り入れられていて、これはおそらく発音の類似からであろうと思いますが、地名リヨンの語源はケルト系の地名ルグドゥヌム (LUGDUNUM) であって、大型ネコとは関係ありません。ちょうど、ローマ軍の駐屯地であったスペインのレオンがラテン語のレギオーネム (LEGIONEM 軍団) に由来するのに、歴史的な語源が忘れられ、ライオンを象徴にしているのと似ています。





 このメダイは彫刻家アドルフ・ペナン(Adolphe Penin, 1888 - 1985)の作品です。アドルフ・ペナンはリュドヴィク・ペナン、マリユス・ペナン、アドルフ・ペナン、ポール・ペナンと四代に亙ってメダルを彫るペナン家のひとりです。1920年頃から60年頃までリヨン市のメダルとして採用され、現在も再びリヨン市のメダルとなっている作品もアドルフ・ペナンによるもので、ライオンを従えたアール・ヌーヴォーの女性像が当店のメダイと共通しています。




(上)参考画像 アドルフ・ペナンによるリヨン市のメダル (la médaille de la Ville)




(上)参考画像 1870年のプロイセン軍退却と、1872年のノートル・ダム・ド・フルヴィエール聖堂建設開始を記念したメダル。リュドヴィク・ペナンとマリユス・ペナンによる1872年の作品。


 上部の環は横に長い形状で、リボンの取り付けに適しています。すなわちこのメダイは安全ピン付のリボンを使い、上着などに勲章風に取り付けることが可能です。しかしながらペンダントとしても仕えるように、当店にて環を一個、追加して取り付けました。後付けの環が不要であれば、簡単に取り外すことが可能です。

 本品はおよそ八十年に制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず良好な保存状態です。ブロンズの温かい色が、聖母の指先からリヨンに降(くだ)る愛と祝福を思わせます。





本体価格 12,600円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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