稀少・高級品

マリ・アレクサンドル・リュシアン・クドレ作 マルセイユを背景に立つノートル=ダム・ド・ラ・ガルド 信仰と希望と愛の聖母 34.2 x 25.5 mm


突出部分を含むサイズ 縦 34.2 x 横 25.5 mm

フランス  1895年頃



 マルセイユの象徴、バジリク・ノートル=ダム=ド=ラ=ガルドの鐘楼頂上にそびえ、「ラ・ボンヌ・メール」(優しい聖母さま)として市民に親しまれる聖母子の巨像、「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」(守護の聖母)のメダイ。パリに生まれたメダイユ彫刻家マリ・アレクサンドル・リュシアン・クドレ (Marie Alexandre Lucien Coudray, 1864 - 1932) が 1895年頃に制作したアール・ヌーヴォー様式の作品です。通常のメダイに比べてサイズが一回り大きいうえに、最大3ミリメートル近い厚みがあり、手に取ると心地よい重みを感じます。





 表(おもて)面にはノートル=ダム・ド・ラ・ガルドがたいへん立体的な浮き彫りで表されています。聖母子はマルセイユの街並みを背景に、錨(いかり)と一体になるように表現されており、ロープがメダイを縁取っています。南フランス最大の港町マルセイユを守護する聖母にふさわしく、ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドは海難事故から守ってくれる聖母として、漁師や船乗りの崇敬を集めています。錨とロープは海の守護聖女ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドにいかにもふさわしいデザインです。


【下】 参考写真 船乗りが聖母に捧げた船の模型が多数吊り下げられたバジリク・ノートル=ダム=ド=ラ=ガルドの身廊




 またキリスト教図像学において、錨は希望の象徴でもあります。錨が希望を象徴するのは、下に示した「ヘブライ人への手紙」6章 19節の聖句によります。

     ἣν ὡς ἄγκυραν ἔχομεν τῆς ψυχῆς, ἀσφαλῆ τε καὶ βεβαίαν καὶ εἰσερχομένην εἰς τὸ ἐσώτερον τοῦ καταπετάσματος, (Nestlé-Aland 26 Aufl.)
   わたしたちが持っているこの希望は、魂にとって頼りになる、安定した錨のようなものであり、また、至聖所の垂れ幕の内側に入って行くものなのです。 (新共同訳)


 「錨」は「魚」や「善き羊飼い」と並んで、初期キリスト教徒に最も愛用された象徴的図像のひとつです。下の写真はローマの聖セバスティアヌスのカタコンベに見られるキリスト教徒の墓碑で、銘 (ATIMETVS AVG VERN VIXIT ANNIS VIII MENSIBVS III EARINVS ET POTENS FILIO) の左に錨、右に魚を線刻しています。





 希望は信仰、愛とともにキリスト教における三つの枢要徳のひとつです。使徒パウロは「コリントの信徒への手紙一」13章 13節において、次のように書いています。

     νυνὶ δὲ μένει πίστις, ἐλπίς, ἀγάπη, τὰ τρία ταῦτα: μείζων δὲ τούτων ἡ ἀγάπη (Nestlé-Aland 26 Aufl.)    信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。(新共同訳)


 信仰は十字架で表されます。このメダイでは、錨の上部に腕木があり、十字架の形になっています。愛はハート形で表されることが多いですが、このメダイにおいては情愛が通い合う聖母子の姿によって具現化されています。使徒パウロが「最も大いなるもの」と書く愛は、三つの枢要徳のなかで最も重要なものであり、愛が有するこの卓越性は、聖母子を中央手前に配置することで表現されています。

 マルセイユ市民に「ラ・ボンヌ・メール(優しい聖母さま)」と親しまれる聖母、ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドの顔立ちは美しく整い、腕に抱かれるイエズスはいかにも幼子らしく、ふっくらと愛らしく表現されています。聖母子の足下の雲は、聖母子が天上にあることを表します。聖母は天上にあって戴冠し、その頭上には栄光の冠が輝いています。





 裏面には信仰を象徴する十字架、希望を象徴する錨とともに、ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドのモノグラム (ND de la G) が中央に配されています。こちらの面の造形も表(おもて)面に劣らず立体的で、細かい点まで丁寧に表現されています。メダイの右下にメダイユ彫刻家リュシアン・クドレのモノグラム (LC) があります。

 近代思想が力を得て、カトリック教会が危機感を募らせた19世紀後半は、あたかも近代思想に立ち向かうかのような力強い聖母子の巨像が、フランス各地に建立された時代でした。ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドが祝別されたのは 1870年です。またル・ピュイ=アン=ヴレ(オーヴェルニュ)にある高さ16メートルの聖母像ノートル=ダム・ド・フランスの祝別は 1860年に行われました。美しく強い聖母は「ヨハネの黙示録」12章において竜と戦う女性であり、まさに「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」(守護の聖母)の名にふさわしい姿です。「適者生存」を唱える進化論や「階級闘争」に基づく共産主義等、近代思想が動揺を与えた時代に建立され、幼子を腕に抱いて近代思想と戦う聖母は、情愛細やかな母子の姿を通して、像を見る者すべての心に、神の愛を力強く響かせています。

 メダイに摩耗はほとんど無く、新品同様の良好なコンディションです。美しいものが多いフランスアンティークメダイのなかでも、深い象徴性、目に心地よい均整の取れたデザイン、立体的な細工、良好な保存状態と、すべてが揃った優品です。





本体価格 21,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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