不慮の事故から守ってくれる守護聖人クリストフ 最初期の自動車と複葉機 優れた細密彫刻の逸品メダイ 24.4 x 20.6 mm


突出部分を含むサイズ 縦 24.4 x 横 20.6 mm

フランス  1910年頃



 ヤコブス・デ・ヴォラギネの聖人伝、「レゲンダ・アウレア」("LEGENDA AUREA") に収録された伝承にしたがって、幼子イエズスを背負う聖クリストフを刻んだメダイ。上品な艶消しの金めっき仕上げです。





 怪力無双の大男クリストフは、引き抜いた立木を杖にして河を渡っています。強い向かい風が吹いているらしく、クリストフの衣の裾は大きくはためいています。クリストフが肩に載せている幼子イエスは、足下の深い水にも、強い風にもまったく動じる様子が無く、見上げるクリストフの眼をまっすぐに見つめながら天を指し、自らが神にして天地の造り主であることを宣言しています。

 川を渡るクリストフが肩の上の幼子を見上げるのは定型化された構図ではありますが、ふたりの動作や表情、特にクリストフの姿勢と表情には、メダイごとに特徴があります。本品のクリストフは悪天候のなか真っ直ぐに立ち、肩の上の幼子を見ています。ようやく仕えるべき主君すなわち神に巡り会うことができた歓びと、全身全霊を捧げる静かな決意が、クリストフの表情にはっきりと表われています。強風と急流のなかに立つ聖人の姿は、外からの艱難に動じない信仰の象徴でもあります。





 幼子イエスの頭部は幾分磨滅していますが、クリストフの顔は制作当時のままの状態で残っています。本品の浮き彫り彫刻において、聖クリストフの顔は 2 x 1 ミリメートル、幼子イエスの顔は直径 1ミリメートルに過ぎません。このような小さなサイズの彫刻に、完全に正しい比率の整った目鼻立ちを与えるばかりか、深い精神性、すなわちふたりの感情の交感、クリストフの信仰心、神の愛までをも余すことなく表現してしまうメダイユ彫刻家の技量は、真に驚嘆に値します。

 クリストフは突然の死から守ってくれる守護聖人で、中世以来、クリストフの絵や像を見た者は、その日のうちに突然の死に遭うことが無いと信じられてきました。それゆえこの聖人はメダイのモティーフとしても絶大な人気を誇りますが、私がこれまでに目にした数多くの聖クリストフのメダイの中で、本品の彫刻は間違いなく最も優れた作品の一つです。





 もう一方の面には自動車レースの場面を浮き彫りにしています。沿道には数多くの見物人が人垣を作っています。土埃を巻き上げて未舗装の山道を駆け上がる自動車のすぐ後ろには、自転車に乗る人の姿も見えます。空には複葉機が飛んでいます。


 Renault AK, 1901


 本品の制作年代は今からおよそ百年前、1910年頃です。この頃の自転車は現在とほぼ同じ形をしていますが、自動車と複葉機はこの時代に特有の形です。浮き彫りにされている自動車の車種は分かりませんが、1901年から 1908年まで生産されていた「ルノー AK」に似ています。フランス自動車クラブ (l'Automobile Club de France, ACF) は 1906年に最初のレースを開催しましたが、「ルノー AK」はこのレースに優勝し、たいへん有名になりました。本品の彫刻はおそらく「ルノー AK」をモデルにしているのでしょう。


 Farman III, 1909


 複葉機は遠くを飛んでいて見づらいですが、第一次大戦以降の複葉機とは明らかに形が異なり、最初期の飛行機であることが分かります。上の絵はフランスのファルマン社が 1909年に初飛行に成功した「ファルマン III型」で、本品に浮き彫りにされている複葉機と似ています。





 本品はおよそ百年前にフランスで制作された古いメダイですが、非常に良好な保存状態で、細部までよく残っています。クリストフの彫刻が優れていることに加え、この時代ならではの自動車や飛行機が浮き彫りにされた美しく興味深い作例です。艶消し金めっきの上品で柔らかな光は、神の僕(しもべ)クリストフの聖性が放つ天上の微光のようです。





本体価格 14,700円 販売終了 SOLD

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