稀少・高級品 大きなサイズのクロワ・ジャネット 彫金を施した二色のヴェルメイユ 二種の小花のエマイユ・シャンルヴェ


クロス本体のサイズ 44.3 x 40.0 mm (外付けの環を除く)

フランス  19世紀中頃



 高さ 4.4センチメートル、幅 4センチメートルとかなり大きなサイズに作ったクロワ・ジャネット。ヴェルメイユ (vermeil)、すなわち表面に金を張った銀製の高級品で、金は二色が使われています。ふたつの面は異なるデザインに基づきつつ、同様の丁寧さで制作されています。




 十字架の交差部は、菱形(正方形)部分の中央にエマイユで花を描き、これを青いエマイユの直線、及び金を施したロープ状の彫金細工で取り囲んでいます。花の形は面ごとに異なっていますが、いずれも様式化された図案で、一方の面は青のみ、もう一方の面は青と白のエマイユによります。

 エマイユの技法はシャンルヴェ (le champlevé) によります。この技法ではビュラン(burin 彫刻刀)を使い、銅板に窪みを彫ります。この窪みにフリット(色ガラスの粉)を入れて窯入れし、フリットが融けるまで窯で加熱します。フリットが融けた後、徐々に温度を下げ、ガラスを銅板の表面に固着させ、窯から取り出した後に研磨仕上げが行われます。

 本品において、交差部の菱形は一辺5ミリメートル足らず、花は直径3ミリメートル足らずの小さいサイズでありながら、たいへん正確に制作され、丁寧に研磨して仕上げられています。この菱形部分はクロス本体と別に制作し、クロスに嵌め込んであります。

 ただし別作の部品であるとはいえ、この小銅板においてフリットが入る窪みは、聖遺物箱のような大型のエマイユ・シャンルヴェ作品に比べれば、はるかに浅いはずです。実際古い時代のクロワ・ジャネットは、時の経過に耐えきれず、エマイユが破損したものが多く見られます。それにもかかわらず本品のエマイユには剥落が一切ありません。

 また下に示した写真のように、実物を数十倍に拡大して観察すると、驚くべきことに気付きます。すなわち、下の写真左側の花弁は長さ 0.6ミリメートルほどですが、意図的なグラデーションが施されています。右側の花弁は長さ 0.7ミリメートルほどですが、脈管部分がグラデーションの効果を示しており、まったくの不透明ガラスによるエマイユ・シュル・バス=タイユ(l'émail sur basse-taille 浅浮き彫りにエマイユを掛ける技法)の稀有な作例となっています。本品のエマイユを制作した職人の優れた技術には、讃嘆の念を禁じ得ません。

 交差部を彩る色のうち、青と金は天空あるいは天国を、また青と白の組み合わせは聖母マリアを象徴します。





 本品のエマイユは、サヴォワ地方の町ブール=ガン=ブレス(Bourg-en-Bresse ローヌ=アルプ地域圏アン県)で制作されます。ブール=ガン=ブレスのエマイユ工芸品は、ブール=ガン=ブレスを含む旧地方名ブレス (Bresse) に因んで、「エモー・ブレサン」(les émaux bressans ブレスのエマイユ)と呼ばれています。現代の「エモー・ブレサン」はひとつの作品に多くの色を使い、輝くように華美ですが、本品は19世紀の貴重な作例であり、現代品とは大きく異なる清楚、清純な作風が、神に愛された一輪の野の花であるナザレのマリアを思い起こさせて心を打ちます。働き始めて最初に貰った給金で、このクロワ・ジャネットを購入した少女は、若き聖母に倣って清らかに生きようとしたのでしょう。




 エマイユと同様、彫金に関しても、ふたつの面が異なるデザインに基づきつつ、同様の丁寧さで製作されているのが本品の特長です。末端に近く楕円形に広がった部分には、やはり細粒状の彫金を背景に簡略な唐草文が打ち出され、小球状の装飾を経て、細い棒状の先端部が突き出ています。外付けの環には、本品を製作した銀製品工房の刻印が見られます。


 本品の金属部分は、信心具の素材として最も高級な銀に、二色の金を被せたヴェルメイユ (vermeil) で制作されています。金はローズ・ロールドを多用し、くぼんだ部分のイエロ-・ゴールドがアクセントになっています。

 19世紀の金めっきは、品物全体を電解液に浸漬する現代の「エレクトロプレート」とは違って、金の薄板を下層の金属に熱で圧着する「ロールド・プレート」です。したがって、大変な手間さえいとわなければ、このクロワ・ジャネットのように、ひとつの十字架に二色の金めっきを施すことは可能です。





 本品のように表裏二枚の銀板を合わせて制作したクロワ・ジャネットは、仮に現代まで残っていたとしても、先端部分が折れて無くなったり、十字架本体が破断している場合が多いですが、本品はよほど大切にされてきたと見えて、欠損の無い完品です。このような状態のクロワ・ジャネットは非常に稀で、入手はほぼ不可能です。


(下) 現代まで伝わるクロワ・ジャネットの大部分は大きく破損しています。使用されている金属の種類や作りを知るために、私はこれらの資料を集めて大切に保存し、活用しています。




 19世紀のフランスで製作されたアンティークのクロワ・ジャネットは、そもそも入手が非常に難しい稀少品ですが、本品にはエマイユの剥落や十字架の歪み、大きな凹みなど、特筆すべき瑕疵がまったく無く、同時代の類品に比べて驚くほど良好な保存状態です。繊細で清楚なエマイユに加え、重厚で美しい古色が醸(かも)す真正のアンティーク品ならではの味わいに、現代の複製品では決して再現できない趣(おもむき)があります。





本体価格 42,800円 販売終了 SOLD

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