最終世代のレクタンギュラー・ウォッチ 《グリュエン キャリバー 370 カーヴァメトリック 十七石》 大型ムーヴメントの男性用時計 1950年代前半



 オハイオ州シンシナチに本社があったアメリカの時計会社グリュエン(Gruen watch company)が、1950年代前半に制作した長方形の腕時計。およそ七十数年前の機種ですが、十七か所にルビー製部品を使ったハイ・ジュエル機で、現在も正確に動作しています。オリジナルの文字盤と金張りケースも、ムーヴメントと同様に、極めて良好な状態です。





 時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)、ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計本体の外側)をケース(英 case)といいます。本品はケース、文字盤とも長方形のレクタンギュラー型で、ムーヴメントも長方形に近い形をしています。


 腕時計はもともと女性が使う物として 1920年頃に誕生しました。懐中時計は外見のデザインもムーヴメントもすべて円形でしたが、おしゃれな女性たちはこれまでと違う四角い時計を求め、時計会社は女性たちの要望に応えて、小さく四角い腕時計用ムーヴメントを開発しました。その結果 1920年代には男性が大きな円形の懐中時計を、女性が小さくて四角い腕時計を、それぞれ使用するようになりました。

 やがて 1930年代後半になると、男性も腕時計を身に着けるようになりました。このとき女性の場合と同様に、男性たちも長方形の時計を欲しがりました。女性用腕時計は 1930年代の時点で男性用よりも進歩しており、長方形の女性用腕時計ムーヴメントは多数が存在していました。しかしながらこの時代の男性用腕時計のムーヴメントは、どれも円形でした。したがって流行のデザインで男性用時計を作るには、円形ムーヴメントを使って長方形の時計を作るという難題を解決しなければなりませんでした。


 円形ムーヴメントを使って長方形の男性用時計を作るには、ケースの三時側と九時側に膨らみを持たせる方法があります。この場合ケースは厳密には長方形でなくなりますが、三時側と九時側の膨らみが目立たないように工夫して、長方形ケースに近いデザインを実現することができました。ケースや文字盤を六角形やクッション型にすることで、円形ムーヴメントを用いつつも長方形に近いデザインとする方法もありました。下の写真はそのような工夫によって作られた「四角い男性用時計」で、いずれも円形ムーヴメントを用いています。


(下) 左から順に、ロード・エルジン 《グレード 531》(1937年)、ブローバ 《アメリカン・クリッパー》(1936年)、ブローバ 《ライタングル》(1938年)、ウエストフィールド 《ハドソン》(1940年)




 しかしながらこの方法では、ケースの三時側と九時側がどうしても膨らんでしまい、完全な長方形の時計を作ることはできません。円形ムーヴメントを使って完全な長方形の男性用時計を作るには、男性用ケースの幅よりも、直径が小さい円形ムーヴメントを使うしかありません。これは男性用時計に女性用ムーヴメントを搭載することを意味します。

 機械は大きく作るよりも小さく作る方が難しいゆえに、非常に小さなサイズの女性用ムーヴメントは、男性用ムーヴメントよりも高度な技術で製作されているといえます。しかしながらサイズに余裕がある方が、高精度のムーヴメントを作るには有利です。詳しく言えば、概ね 1960年代以降の良質な機械式時計は、女性用ムーヴメントであっても十分な精度を有します。ですから男性用腕時計のケースに女性用ムーヴメントを入れても、何ら問題はありません。それどころか小さな女性用ムーヴメントを男性用腕時計の大きなケースに入れるのは、ひげぜんまいの磁化を防ぐのに良い方法です()。

 しかしながら 1950年代頃までの女性用ムーヴメントは、男性用ムーヴメントに比べると、精度に不安がありました。当時は「男は外で仕事をし、女は家庭を守る」時代でしたから、男性用時計の精度は女性用時計よりも重視されました。長方形の男性用時計のケースは大きいですが、これに小さな女性用ムーヴメントを入れるならば、せっかくのスペースが無駄になります。逆にケース内の広いスペースを有効利用できれば、精度の向上につながります。それゆえ四角い男性用ムーヴメントを開発する必要が高まりました。





 優れた精度を有する長方形の男性用時計を実現するには、もうひとつ、細長いムーヴメントを作っただけでは解決しない困難な問題がありました。男性用の細長い時計は、手首の端から端までに近い長さがあります。それゆえ手首に接する面がまっすぐだと時計の両端が浮き上がってしまい、着け心地が悪いのです。男性用サイズの細長い時計を気持ちよく使うためには、手首の丸みに沿ってケースが湾曲する必要があります。

 外で働く男性のために高精度の細長い時計を作るうえで、この湾曲は大きな障碍になります。男性用サイズの細長いムーヴメントを作ったとしても、湾曲した薄型時計のケースに入れることができないからです。歯車が曲がると回転しませんから、ムーヴメントを曲げるわけにはゆきませんが、細長くまっすぐなムーヴメントを湾曲した薄型時計に入れると、ムーヴメントの両端がケースの内側に当たってしまいます。

 時計の厚みが増しても構わないのであれば、細長くまっすぐなムーヴメントを湾曲したケースに入れることは可能です。しかし 1930年代には薄型時計が流行していましたから、時計の厚みを増すことは論外でした。薄型時計を湾曲させるのであれば、やはり中心部に小さなサイズのムーヴメントを入れるしかありません。男性用サイズの細長いムーヴメントを、湾曲した薄型時計のケースに入れることができれば理想ですが、これは実現不可能な難題に思われました。







 この問題を見事に解決した画期的な発明が、グリュエン社のカーヴェクス(Curvex)ムーヴメントでした。上の写真は 1937年のクリスマス・シーズンにグリュエン社が打った広告で、中央上部にカーヴェクス・ムーヴメント(左)と従来のムーヴメント(右)の断面を示しています。二つの断面を比べると、ケースの容積が同じでも、カーヴェクス・ムーヴメントはケース内のスペースをはるかに有効に利用していることがわかります。

 曲がったムーヴメントはスイス、ビール(Biel)の時計師エミール・フレイが 1929年に発明したもので、グリュエン社の発明ではありませんが、特許がグリュエン社に譲渡されたことにより、カーヴェクス・ムーヴメントはグリュエン社のみが製作する名機となりました。グリュエン社のカーヴェクス・ムーヴメントには四種類があって、1935年にキャリバー 311が、1937年にキャリバー 330 カスタム・カーヴド(Custom Curved)が、1940年にキャリバー 440が、1948年にキャリバー 370 カーヴァメトリック(Curvametric)が、それぞれ開発されました。







 上の写真二点はグリュエン・カーヴァメトリックの見開き広告で、「ライフ」誌 1948年 11月8日号に掲載されています。

 カーヴァメトリック(Curvametric)は英語カーヴ(英 curve 曲線)とギリシア語メトロン(希 μέτρον 大きさ、計測、計測器)に由来する造語で、「曲線的設計により必要な大きさを確保した」という意味、あるいは「曲がりつつも正しく時を計測する」という意味です。カーヴァメトリックの愛称が付いた機種には男性用と女性用があって、本品に搭載されているキャリバー 370は男性用の大きな機械です。キャリバー 370の製造期間は 1948年から 1954年ですが、文字盤のデザインから判断すると、本品は 1952年前後に製作された品物と考えられます。


 男性の上着丈や女性のスカート丈などと同様に、時計ケースの大きさや形状も流行が移り変わります。1920年代から 50年代までは四角い時計が圧倒的人気を誇りましたが、1960年代に入ると円形ケースの人気が復活し、レクタンギュラー型をはじめとする四角い時計はほとんど見られなくなりました。1950年代後半から 1960年代はアメリカの時計産業が急速に衰退した時期でもあり、ウォルサム、エルジン、ハミルトン、グリュエンが力を失った時計史上の変革期でもありました。

 1950年代前半に開発されたカーヴァメトリックは、華やかなレクタンギュラー・ウォッチ(長方形ケースの腕時計)が男性の間で流行した最後の時代を飾るとともに、スイスをしのぐ勢いであったアメリカ時計産業が最後の輝きを見せた時代の時計でもあります。本品キャリバー 370の美しい作りと優れた性能は、アメリカが空前の繁栄を誇った 1950年代へのノスタルジーを誘います。





 本品のムーヴメント、グリュエン キャリバー 37は長方形に近い形で、電池ではなくぜんまいで動く手巻式です。電池で動くクォーツ式腕時計が普及したのは、1970年代以降のことです。本品が製作された 1950年代にはクォーツ式腕時計はまだ存在せず、腕時計はすべてぜんまいで動いていました。

 秒針があるクォーツ式腕時計を耳に当てると、秒針を動かすステップ・モーターの音が一秒ごとに チッ、チッ、チッ … と聞こえます。デジタル式など秒針が無いクォーツ式腕時計を耳に当てると、何の音も聞こえません。これに対して機械式時計、すなわち本品のようにぜんまいで動く腕時計や懐中時計を耳に当てると、小人が鈴を振っているような小さく可愛らしい音が、チクタクチクタクチクタク…と連続して聞こえてきます。機械式時計を耳に当てると聞こえてくるこの音は、天符の振動に伴ってアンクルの入り爪とガンギ車がぶつかる衝撃音です。グリュエン キャリバー 370は 5振動(f = 18000 A/h)の機械で、一秒間あたり二回半の衝撃音が聞こえます。





 本品グリュエン キャリバー 370をはじめとするヴィンテージ時計のムーヴメントには、振動数に関して大きな長所があります。グリュエン キャリバー 370は 5振動のロー・ビート機です。時計について浅く齧った素人はハイ・ビート機を崇拝し、ロー・ビート機を見下しがちです。知ったかぶりをする自称時計通が多いので、このような顧客層に訴求するため、近年の機械式時計はどれも 6振動以上に作られています。時計会社が存続するためには利益を出さなくてはならず、顧客の大部分を占める素人に分かりやすい数値を示すのは、販売数を伸ばす賢いやりかたかもしれません。しかしながら筆者(広川)はこのような大衆への迎合を残念に感じています。

 分かりやすい例を出すならば、非常に正確な機械式クロックとして知られるビッグ・ベンは、振り子が四秒で一往復します。片道は二秒ですから、振動数は本機の十分の一に相当する 0.5振動(A/f = 1800)で、極めてロー・ビートです。さらに言えば天体の動きは地上の如何なるクロック、如何なるウォッチよりも正確ですが、地球の自転一回を一振動と考えるならば、一日は 86400秒ですから、地球の振動数はおよそ 0.00001振動(1/86400振動 A/f = 0.0000115740)です。時計の正確さを決めるのは振動数の大小ではなく、振動の安定性であることが、この一事からもお分かりいただけるでしょう。

 機械式腕時計において大切なのは、天符の振動が様々な要因 ― 主ぜんまいの残量、気温、重力の方向 ― に影響されないことであって、これと振動数の大小はまったくの別問題です。本品グリュエン キャリバー 370は製造にコストがかかる巻き上げひげ(ブレゲひげ)を採用し、必要な全ての箇所にルビーを入れて、長年にわたり正確に動く時計としています。





 良質の機械式腕時計、懐中時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはたいへん硬い鉱物ですので、良質の時計の部品として使用されるのです。本品のムーヴメント、グリュエン キャリバー 370には十七個のルビーが使用されています。上の写真ではルビーが五個しか見えませんが、あとの十二個は機械の裏側(文字盤側)など、上の写真に写っていない部分に使われています。十七個のルビーを使用した十七石(じゅうななせき)のムーヴメントは摩耗してはならない個所すべてにルビーを使用した高級機で、ハイ・ジュエル機(英 a high-jewe movement)と呼ばれます。





 上の写真はムーヴメントの受け側、すなわちムーヴメントをケース裏蓋から外すと見える側を撮影しています。ブリッジ(英 bridge 受け)と呼ばれる部分に金色の文字でメーカー名グリュエン・ウォッチ・カンパニー(Gruen Watch Company)、十七石ムーヴメントであることを示すプレシジョン(英 Precision 高精度機)、特許カーヴェクス(CURVEX patent)、石数を表す十七石(SEVENTEEN JEWELS)、製造国名スイス(Switzerland)、ムーヴメントのシリアル番号(D862180)等が刻まれています。キャリバー名を表す数字 "370" が、地板の裏、香箱に近いところに彫り込まれています。





 グリュエン社はオハイオ州シンシナチに本社がありましたが、アメリカでの操業を停止する直前に国内工場で製作した二十一石ムーヴメント、トゥエンティ・ワンを別にすれば、スイスからムーヴメントを輸入し、アメリカでケースに入れて歩度(時間の進み方)の最終調整をする、というやり方を創業以来続けました。本品キャリバー 370もスイス、ビールにあるグリュエンの自社工場で作られたものです。上の写真はケース裏蓋の内側です。「グリュエン時計会社がアメリカ合衆国内でケースに入れて歩度調整を行った」(CASED AND TIMED IN U.S.A. BY GRUEN WATCH COMPANY)の文字は、この方式を意味します。

 アメリカではどの時計会社も自社でケースを作らず、ケース製作の専業メーカーに外注していました。本品のケースはスター時計ケース会社がグリュエンのために製作したもので、当時の標準である十金張りです。現代のめっきは金の層が薄いですが、昔の金張りはたいへん丈夫であるうえに、グリュエンの金張りは分厚いことで有名でした。金は摩耗しやすい金属ですが、十金はたいへん丈夫であり、シャンパンゴールドのように上品な色合いも魅力です。"0752065" はケースのシリアル番号です。この時代の時計において、ムーヴメントとケースのシリアル番号は互いに無関係です。

 いちばん下に 370-821 とあります。370 はキャリバー名です。821はスタイル・ナンバーといって、本品ケースのデザインを示す型番です。キャリバー名とスタイル・ナンバーは、交換用の風防を探すときに必要になります。





 艶消しの白色文字盤には、黒の文字でグリュエン・カーヴェクス プレシジョン(GRUEN CURVEX PRECISION)と書かれ、最下部にスイス(SWITZERLAND)の文字が見えます。

 白をはじめとする明色の文字盤は、焼けと呼ばれる変色をしばしば生じます。文字盤の焼けは汚れが付着しているのではなく、文字盤の表面が変質しているので、拭いて清掃することはできず、気になる場合は表面を削り取って書き直す必要があります。この処理を文字盤再生(リファービッシュ、リダン)と呼びます。再生文字盤の仕上がりには巧拙がありますが、私のような専門業者が見れば、オリジナルの文字盤と、上手くできた再生文字盤は判別できます。本品の文字盤は再生品ではなく、グリュエンが仕上げたままのオリジナルです。焼けが起こりやすい白色にもかかわらず、変色は極めて軽微で、不思議なほど綺麗な状態を保っています。

 文字盤最外周のところどころに剥落がありますが、これは文字盤がベゼルに接触する部分で、新品であってもきずが付きます。本品はこのきずもほとんどありません。なおムーヴメントと文字盤をケースに格納すると、文字盤最外周のきずは見えなくなります。





 文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとの印を、インデックス(英 index)といいます。本品のインデックスはアール・デコ様式のアラビア数字とドーム状の小点が交替する立体インデックスで、1950年代に製作された文字盤の特徴をはっきりと示しています。インデックスと針はいずれもケースと同色の明るい金色で、光を美しく反射します。

 現代の時計の秒針はセンター・セカンドといって、短針、長針と同様に、時計の中央に取り付けられています。これに対して 1950年代までの時計の秒針は、ごく少数の例外を除き、スモール・セカンドといって、六時の位置に取り付けられています。時計の中央に秒針を取り付ける方式のムーヴメントを制作するのは技術的に困難で、センター・セカンドが普及するのは1960年代です。1950年代までの時計はほとんどすべてスモール・セカンド方式で、本品も例外ではありません。

 針は金色のランス型で、当時のオリジナルです。ランス(英 lance)とは槍(やり)のことで、クラシカルなその表情は、ゆったりと時を刻むアンティーク時計に良く似合っています。





 先ほども説明しましたが、ゴールド・フィルドとは板状の金をベース・メタルにろう付け(溶接)したもので。現代の金めっき(エレクトロプレート)に比べると金の厚みは数十倍に達し、摩耗に強く、見た目にも高級感があります。本品のケースに張られている金は十金(十カラット・ゴールド、純度 10/24の金)で、十八金に比べて金そのものの強度が格段に強く、色の点でも淡く上品なシャンパン・ゴールドをしています。

 上の写真は本品ケースの裏側で、グリュエンの社名と十カラット・ゴールド・フィルドの刻印があります。グリュエンの金張りは分厚いことで有名でしたが、実際のところ、本品のケース裏蓋もたいへん良好な状態です。ケース裏蓋の縁、ラグ(バンドを取り付ける突起)の先端等、脆弱であるはずの部分においても、金張りはまったく剥げていません。





 本品の風防は、当時のままのオリジナルです。この風防はプレクシグラスと呼ばれる透明度が高いアクリル樹脂でできています。1950年代は美しく個性的なデザインの時計が華やかに競い合った時代です。本品はケースが湾曲しているだけでなく、カマボコ状の風防も目を惹きます。風防は 12-6時の線に沿って湾曲するだけでなく、3-9時の線に沿っても湾曲し、中央が高まったドームとなっています。ベゼルと接する部分において、本品の風防は直線ではなく優雅な弧を描きます。

 本品の風防は五時付近に亀裂が入っています。本品は七十年も前の製品ですので、交換用風防はどこを探しても手に入りません。この亀裂は実物を肉眼で見てもなかなか気づかない小さなもので、美観上も実用上も弊害はありません。本品の現状の風防にはこれ以外に亀裂も無く、十分に良い状態ですのでご安心ください。


(下) グリュエン社による 1950年の広告。当時ハイ・ジュエル・ウォッチの価格は、若者の月給の二、三か月分に相当しました。時計が人生の節目にふさわしい買い物であったことがよくわかります。




 1941年12月8日、日本が真珠湾を攻撃して日米が開戦すると、合衆国政府はアメリカ国内でムーヴメントを製作するエルジン、ハミルトン、ウォルサムの各時計会社に命じ、全力を挙げて軍用時計のみを生産させました。したがってこの三社は、太平洋戦争のあいだ、民生用の時計を作ることができませんでした。

 グリュエンはスイスに自社工場を持っていましたので、太平洋戦争中、わずかながらも民生用の時計作りを継続しました。しかしながらシンシナチにあるグリュエンの本社工場では時計作りを休止して、軍用の精密機器や計器類を製作したため、戦時中に作られるグリュエンの時計は激減しました。

 アメリカの時計各社が民生用の時計を作れずにいる状況は、中立国スイスの時計産業にとって大きなビジネス・チャンスでした。戦前のアメリカ時計産業には力があって、スイスよりも品質の良い時計を作っていましたし、関税による保護も受けていましたので、アメリカ人がスイスの時計を手にする機会はほとんどありませんでした。しかしながら民生用の時計が不足した戦時下のアメリカには、大量のスイス時計が輸入されました。こうして顧客を奪われたアメリカの時計会社は経営上の大きな打撃を受け、ムーヴメントを自社で開発、生産する力を失ってゆきました。1960年代頃まではスイスのメーカーからムーヴメントを買い、それを時計に入れて売ることでなんとか余喘(よぜん 最後の息)を保っていましたが、それも長くは続きませんでした。





 グリュエン社の工場はビール(スイス)にありましたから、本品が搭載するキャリバー 370はスイス製であってアメリカ製ではありませんが、グリュエン社が誇る自社開発、自社製作のムーヴメントです。

 カーヴェクス・ムーヴメントはグリュエンの時計作りの象徴であり、1937年から作り続けられましたが、1948年に開発された本品キャリバー 370が最後のカーヴェクス・ムーヴメントとなり、1954年頃にはカーヴェクスの生産を終了しました。キャリバー 370を搭載した本品は、1949年のグリュエン トゥエンティ・ワンとならんで、グリュエン社が燃え尽きる寸前に放った最後の輝きです。





 本品は男性用として作られた時計ですが、二十世紀中葉以前の時計は現在に比べて小さめのサイズであり、たいへん上品であるゆえに、女性にもお使いいただけます。バンドはお好きな色、質感、長さのバンドに換えることができます。時計会社はバンドまで作っていませんので、アンティーク時計のバンドをお好みのものに取り換えても、アンティーク品としての価値はまったく減りません。時計お買上時のバンド交換は、当店の在庫品であれば無料で承ります。

 当店はアンティーク時計の修理に対応しております。アンティーク時計の修理等、当店が取り扱う時計につきましては、こちらをご覧ください。









 当店では時計用の箱をご購入いただけます。箱はレプリカ(現代の複製品)ではなく、本物のヴィンテージ品(アンティーク品)です。グリュエン社の箱は別売りですが、本品をお買い上げいただいた方には特別価格でご提供いたします。ご相談ください。





 グリュエン 370-821 の純正交換用風防は、世界じゅう探しても手に入らないような品物ですが、アンティークアナスタシアには当時の新品が在庫しております。将来において万一交換が必要になった場合、当店であれば対応可能ですのでご安心ください。





 当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十二回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 188,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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