1975年製の「ブローバ トゥエンティ・スリー (23)」。23石オートマティック・ムーヴメント、「ブローバ キャリバー 11AOACB」を搭載しています。「キャリバー
11AOACB」を含む「キャリバー 11AO」系ムーヴメントは、ブローバが製作した最後の機械式ムーヴメントです。
本品は如何にも 1970年代らしいデザインですが、機械式時計であるという点を除けば、外見上は現代の時計と共通点が多くなっています。すなわちセンター・セカンド式あるいは「中三針(なかさんしん)式」であり、秒針は赤色ではなく、ケースの材質はステンレス・スティールです。時針と分針の形も現代風の太いバトン型です。
電池で動く時計を「クォーツ式」、ぜんまいで動く時計を「機械式」といいます。また時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。機械式ムーヴメントには「手巻ムーヴメント」と「自動巻ムーヴメント」(オートマティック・ムーヴメント)があります。本品が搭載するのは、機械式ムーヴメントのなかでも、「自動巻ムーヴメント」と呼ばれる種類です。
上の写真では、右下に銀色の大きな歯車(角穴車)があり、その下にさらに大きな金色の歯車の一部が写っています。大きな金色の歯車は「香箱」(こうばこ)の蓋です。上の写真は真上から撮影しているので分かりませんが、「香箱」は扁平な円柱状容器で、この中にぜんまいが入っています。この点で、手巻ムーヴメントと自動巻ムーヴメントに違いはありません。
手巻ムーヴメントと自動巻ムーヴメントの違いは、手巻ムーヴメントが竜頭(りゅうず ツマミ)を回してぜんまいを巻くのに対し、自動巻ムーヴメントは二通りの方法でぜんまいを巻けることです。すなわち自動巻ムーヴメントは、手巻ムーヴメントと同様に竜頭を回してぜんまいを巻くこともできますし、手首に着けて日常生活をしていれば、ぜんまいが自動的に巻き上がるようにも作られています。
自動巻ムーヴメントがぜんまいを自動的に巻げるためのエネルギーは、「回転錘」(かいてんすい ローター)の動きから取り出しています。上の写真で右上半分を占める半月形の部品が回転錘です。「ブローバ キャリバー
11AOACB」の回転錘は、ムーヴメントの中心を軸にして、いずれの方向にも三百六十度自由に回転するように作られています。回転錘には「ブローバ時計会社」(BULOVA
WATCH Co)、11AOACB、「二十三石」(TWENTY THREE JEWELS) の刻印があります。
良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはモース硬度「9」と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)ですので、高級時計の部品として使用されるのです。手巻、自動巻にかかわらず、必要な部分すべてにルビーを入れると、「17石」(じゅうななせき)のムーヴメントになります。17石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high
jewel movement)と呼ばれ、高精度、長寿命の高級機です。「ブローバ キャリバー 11AOACB」には 17石のものと 23石のものがありますが、本品は23石のルビーを使用し、部品の摩耗対策に万全を期しています。
「ブローバ キャリバー 11AOACB」は、「ブローバ キャリバー 11AO」系のムーヴメントです。「ブローバ キャリバー 11AO」系には次の機種が含まれます。
11AO | 手巻 | 二針 | |
11AOC | 手巻 | 三針 | |
11AOCD | 手巻 | 三針 | デイ |
11AOCB | 手巻 | 三針 | デイ・デイト |
11AOAC | 自動巻 | 三針 | |
11AOACD | 自動巻 | 三針 | デイ |
11AOACB | 自動巻 | 三針 | デイ・デイト (本品) |
ブローバ時計会社 (Bulova Watch Company) は 1911年から時計を作り続けている世界最大の時計メーカーで、1960年にアキュトロン(音叉時計)、1970年代にクォーツ時計の生産を始める一方で、1970年代末頃まで良質の機械式時計を製作し続けました。
「キャリバー 11AO」系はブローバ最後の機械式ムーヴメントで、機械式時計の到達点ということができます。「ブローバ キャリバー 11AOACB」は
11 1/2リーニュ、21,600振動 (f = 21600 A/h)、パワー・リザーヴ 40時間の 23石高級自動巻ムーヴメントで、耐震装置はキフ・ウルトラフレックス
(Kif Ultraflex) を採用しています。
ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計本体の外側)を「ケース」(英 case)といいます。本品のケースはステンレス・スティール製で、艶やかに磨いて仕上げられています。ステンレス・スティールは摩耗に強く、アレルギーも起こしにくい優れたケース素材ですが、本品のような鏡面仕上げのステンレス・スティールは、使ううちに無数の細かいキズが付きます。
商品写真ではステンレス・スティールの質感を伝えるため、また大きなキズや凹み、歪みが無いことを示すために、ケース表面に光を反射させています。そのためキズがあるようには見えませんが、本品のケースにも無数の小キズが付いています。これらは使用に伴う通常の小キズであり、これを気にしていては時計を使えません。ステンレス・スティール製ケースの小キズは素材の特性上避けることができません。
上の写真はケースの裏側で、裏蓋に「ブローバ」(BULOVA)、N5、T1110896、「ステンレス・スティール製ケース」(STAINLESS
STEEL CASE)、「防水」(WATER RESISTANT) の刻印があります。 "N5" はブローバ特有の製造年の表示で、「1975年製」を表します。"T1110896"
はケースのシリアル番号です。「防水」(WATER RESISTANT) の表示がありますが、これは新品時のことで、アンティーク時計(ヴィンテージ時計)の防水性は本品に限らず失われています。
本品の文字盤はグレーで、1970年代に流行したグラデーション(色の濃さが連続的に変化する表現)を採り入れています。文字盤はたいへん綺麗な状態ですが、再生(リファービッシュ、リダン)したものではなく、時計が製作された当時のオリジナルです。「ブローバ」(BULOVA)、「二十三石」(23 JEWELS)、「オートマティック」(AUTOMATIC) の表示があります。
5時の位置に「デイ・デイト表示」があります。「デイ」(英 day)とは「曜日」、「デイト」(英 date)とは「日付」のことです。「ブローバ キャリバー
11AOACB」のデイト表示は、竜頭の引き出し・押し込みにより早送りできます。
文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の印を「インデックス」(英 index)といいます。本品のインデックスは銀色の棒を植字したバー・インデックスで、すべて横向きである点がたいへん特徴的です。一見したところ時刻を読み取りにくそうに思えますが、実際に使ってみると通常のインデックスと変わりなく容易に時刻を読み取れます。
本品のクリスタル(風防)はフランジ(flange つば)付きで、上部が四隅を切り落とした四角形、下部が円形になっています。四隅のうち、上の写真で手前に写っている隅の上下部境目に、小さな罅(ひび)が入っています。この品番の代替用クリスタルは当店に在庫していませんが、現状でも実用上の問題は無く、またこの罅が簡単に拡大することもありません。
本品は男性用として作られた時計ですが、一部の現行品のように極端な大型サイズではないので、大きめの時計がお好きな女性にも十分にお使いいただけます。
バンドはお好きな色、質感、長さの革バンド、もしくは金属製バンドに換えることができます。本品のラグ(バンドを取り付ける突起)間の距離は 19ミリメートルで、最も手に入りやすい幅
18ミリメートルのバンドも使えますので、後あとのバンド交換も容易に楽しむことができます。本品はケースも文字盤も無彩色ですので、何色のバンドでも美しく合わせることができます。時計会社はバンドまで作っていませんので、アンティーク時計のバンドをお好みのものに取り換えても、アンティーク品としての価値はまったく減りません。時計お買上時のバンド交換は、当店の在庫品であれば無料で承ります。
当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十二回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。