日本製 草花文金銀象嵌 工芸品水準の女性用懐中時計 二十一石の高級品 1960年代後半頃


ケースの直径 29.4 mm (突出部分を除く)

ケースの厚み 10.5 mm (風防を含む)



 五百円硬貨(直径 26.5 mm)に近い小さなサイズの懐中時計。普段に使えるのはもちろんのこと、和装の際にも着物の帯に挟むことができます。





 本品はおよそ五十年前の時計です。この時代には現代のような電池の時計(クォーツ式時計)はまだ存在せず、時計はすべてぜんまいで動いていました。本品の十二時の位置から出ているツマミを「竜頭」(りゅうず)といいます。竜頭を一段階引き出して回すと時刻合わせができます。竜頭を引き出さずに右回りに回すと、ぜんまいを巻くことができます。本品のようにぜんまいで動く「機械式時計」は、使う前にぜんまいを巻く必要があります。ぜんまいをいっぱいに巻くと、一日半動きます。時計を使わない日は、ぜんまいを巻く必要はありません。

 上の写真で白っぽく写っている部分を、「文字盤」(もじばん)または「文字板」(もじいた)といいます。本品の文字盤はヘアライン加工を施した明るいシルバー・グレーで、光を柔らかく反射します。この文字盤は時計が制作された当時のままの状態で、後世の補修を加えない「オリジナル」ですが、十分に綺麗な状態です。

 短針一時間ごと、長針五分ごとの位置に付けられた文字盤上のマークを「インデックス」(英 index)といいます。本品が製作された1960年代には、シンプルな棒型の「バー・インデックス」が流行していました。本品の文字盤には、小さな部品を立体的に植字したバー・インデックスが採用されています。

 現代のクォーツ式時計には、当たり前のように秒針が付いています。しかしながら秒針は、本来、ストップ・ウォッチの代用として作業用・測定用に取り付けられているものです。機械式時計には秒針があるとは限りません。本品は作業用の時計ではなく、ドレス・ウォッチですので、秒針がありません。

 長針と短針は細い直線状の「フィル型」です。「フィル」(fil) とはフランス語で「糸」、「針金」を意味します。フィル型の針はドレス・ウォッチに特有の形で、フィル型の針とバー・インデックスの組み合わせは、この時計にたいへん優雅で上品な表情を与えています。





 文字盤には「シチズン」のロゴ(CITIZEN) と、「二十一石」(21 JEWELS) の文字が書かれています。「二十一石」とは、時計内部の機械(ムーヴメント)に使われているルビーの数です。

 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。本品はぜんまいで動く「機械式ムーヴメント」を搭載しています。本品のムーヴメントは機械式のなかでも「手巻ムーヴメント」と呼ばれる種類で、一日一回、手動でぜんまいを巻き上げる必要があります。ぜんまいは竜頭(りゅうず ケース外側に突出したつまみ)を回すことで簡単に巻き上げることができます。

 本品のムーヴメントはシチズンの手巻きムーヴメント、「キャリバー 6700」です。「シチズン キャリバー 6700」は使われているルビーの数が多い高級機で、十九石のものと二十一石のものがあります。本品に搭載されているのは二十一石のモデルです。

 昔の女性用時計のムーヴメントは非常に小さいですが、なかでも「シチズン キャリバー 6700」は最小クラスのムーヴメントで、サイズは 5.75 x 6.75リーニュ(13.0 x 15.15ミリメートル)しかありません。このように小さな機械であるにもかかわらず、振子の役割をする「天符」(てんぷ 上の写真の右端に見える金色のリング状部品)は一秒間に六回、一時間に二万一千六百回振動し、正確に時を刻みます。「天符」は機械式時計の心臓部です。「キャリバー 6700」の天符は、シチズン社が考案した耐衝撃装置「パラショック・スリー」(Parashock-3) で守られています。





 本品の裏蓋には日本の伝統工芸である象嵌(ぞうがん)が施されています。これは黒い鋼の地に金と銀を埋めて文様を描き出したもので、スペインのダマスキナドと同様の技術です。京都で作ったものでしょうか。肉眼で見ても分かりませんが、本品の金はイエロー・ゴールドとグリーン・ゴールドの二種が使われています。黄色いのは純金、緑がかっているのは金に少量の銀を加えた合金でしょう。白い花は銀で、硫化によるくすみが落ち着いた趣きです。裏蓋を拡大して見ると、象嵌職人が丁寧な手作業で作った作品であることがわかります。ひとつひとつの花の中心には、タガネで文様が付けてあります。





 上の写真は女性用懐中時計に適した絹の組み紐を付けて撮影しています。組み紐は京都のゑり正様の製品で、実費にてお分けできます。

 19世紀以前の懐中時計には、ムーヴメントやケースに彫金装飾が施されていました。腕時計の時代になっても、1920年代頃まで、時計は彫金やエマイユによって美術工芸品のように飾られていました。しかしながら 1930年代以降になると、時計の性能が向上したのとは裏腹に、凝った細工は高価な宝飾時計にしか施されなくなります。現代において、彫金やエマイユは宝飾時計にさえ施されません。

 本品は 1960年代の時計でありながら、本格的な工芸品として作られています。二十世紀中葉以降の時計には非常に珍しい作例です。





84,000円

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