重なり合う二つの愛と生命 《クール・ヴァンデアン cœur vendéen 銀製ペンダント 24.4 x 11.8 mm》 神の愛とともに燃える人の愛 フランス 1989年頃


突出部分を含む縦横のサイズ 24.4 x 11.8 mm  重量 1.2 g



 三十年あまり前のフランスで制作されたクール・ヴァンデアンのペンダント。クール・ヴァンデアン(仏 le cœur vendéen)とはヴァンデ地方の心臓、あるいはヴァンデのハート形という意味です。

 フランス西部、ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏のヴァンデ県(la Vendée)は、中世のポワチエ伯領(Le comté de Poitou)または近世のポワトゥ(Le Poitou)のうち、ビスケー湾(大西洋)に面する地方です。かつてはバ=ポワトゥ(Bas-Poitou)と呼ばれていました。クール・ヴァンデアン(仏 le cœur vendéen)はこの地方の男性が使うエパングル・ド・コル(épingle de col 襟元の飾り)に使われ始めたモティーフで、当初は左右に一つずつの透かし細工の心臓を繋いだ形状でした。クール・ヴァンデアンのモティーフは女性の間にも次第に広まり、その過程で王冠と十字架が付加されました。王冠と十字架は忠実さの象徴であり、愛を象徴する心臓が王冠と十字架を戴く意匠は、婚姻の貞操を表しました。





 クール・ヴァンデアンには少なくとも数百年の歴史がありますが、現在では流麗なカリグラフィー風のクール・ヴァンデアンが用いられています。これはフランスの高名なデザイナーであるミシェル・ディル(Michel Disle, 1934 - 2019)が 1989年にデザインしたもので、本品もディルの意匠に基づきます。

 クール・ヴァンデアンはヴァンデ地方で愛され、社会のあらゆる分野に用いられる反面、ジュエリーに特に多用されるわけではありません。実際クール・ヴァンデアンをモティーフにしたビジュ(ジュエリー)は極めて珍しく、実物を手に入れるのは、筆者(広川)自身、本品が初めてです。クール・ヴァンデアンが現在のデザインになった 1989年は、これをモティーフにビジュが制作される好機であったはずですが、おそらくそれ以降、クール・ヴァンデアンのビジュはほとんど作られていないと思われます。したがって本品の制作年代は 1989年頃と考えられます。


 写真にうまく写っていませんが、上部に突出する環の内側裏面に蟹のポワンソン(検質印)が刻印されています。蟹はフランスにおける銀無垢製品の検質印で、純度八百パーミル(八十パーセント)の純度を証明します。





 上の写真は本品を男性店主の手に乗せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。







 クール・ヴァンデアンはヴァンデ地方の象徴であると同時に、二つの心臓(ハート)の重なりは《神と人に通い合う愛》《男女の間に通い合う愛》という普遍的価値の象徴でもあります。それゆえ本品ペンダントは、万人にとって親しみやすく美しい銀無垢ジュエリーに仕上がっています。

 本品は三十年以上前のフランスで制作された品物ですが、保存状態は極めて良好です。めっきではない銀無垢製品であるゆえに表面が剥離することもなく、すっと美しい状態でお使いいただけます。特筆すべき問題は何もありません。





本体価格 9,500円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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