佐藤 恵美 メゾチント 「プライド 誇り」 Emi Sato, "PRIDE", 147x 107 mm, mezzotint on paper


印画(版画の画面)のサイズ  縦 147 x 横 107 mm

サポート(版画を刷ってある紙)のおおよそのサイズ  縦 23 x 横 19 cm



 香箱を組んで座る猫のメゾチント。実物を見るように写実的な横顔は、猫への愛と深い理解に裏打ちされています。優れた観察力と版画家としての技量を示す優れた作品です。

 「プライド 誇り」の背景は一見したところ何も描かれていませんが、浮世絵のようなベタ塗りではなく、微妙な陰翳に彩られています。十九世紀後半のフランスでは、才能ある画家たちが日本美術の強い影響を受けつつも、そこに埋没することなく彩管を振るいました。「プライド 誇り」の背景に見られる単調ならざる美しい陰翳は、ジャポニスム絵画にも似た薫りを感じさせます。写真と見紛うばかりの写実性と、きわめて絵画的な背景処理を両立させた本作品は、メゾチントの特性を活かした秀作として高い評価に値します。





 猫は人間に懐きはしても、決して思い通りになりません。「プライド」(英 pride 誇り)というこの作品の題名は、人気のコンパニオン・アニマルでありつつも野性を失わない猫にぴったりです。

 わが国におけるイエネコの歴史は、大陸から輸入された唐猫(からねこ)に始まるというのが通説です。古代エジプトで猫が倉の小麦を守ったように、わが国の猫は鼠の食害から米を守り、昔の人は益獣である猫を愛護尊重しました。近世以来の米屋が必ず猫を飼ってきたことはよく知られ、この伝統は現在まで続いています。猫は蚕も鼠から守ります。新潟県長岡市森上の南部神社は養蚕の神を祀りますが、この神社には狛猫が鎮座し、猫股神社の愛称で親しまれています。





 益獣としての働きを評価する一方で、猫そのものの美しさと愛らしさゆえに、わが国でも多くの人たちが猫を愛しました。

 平安時代の文学や文書記録に、猫はよく登場します。999年9月19日、宮中で子猫が生まれた際に一条天皇はたいへん喜ばれ、この猫を「命婦のおもと」と名付けられました。一条天皇の当時、命婦(みょうぶ)とは五位以上の位階を有する女性、または五位以上の貴人の妻を指しました。つまり一条天皇の愛猫おもとは、貴婦人の扱いを受けたのです。紫式部の「源氏物語」にも、藤原定家の「明月記」にも、猫が登場します。「明月記」 1207年7月4日の項には、定家の愛猫が放し飼いの犬に咬み殺されたことが記されています。定家の嘆きは甚だしく、「悲慟の思ひ、人倫に異ならず」と書き記しています。

 猫寺は各地にありますが、これは住職が心優しい愛猫家であるだけでなく、猫を祀っている場合も多くあります。招き猫で知られる豪徳寺の他にも、両国回向院には小判猫の墓がありますし、新宿区西落合の猫寺(自性院)には猫顔の地蔵尊が安置されています。1602年8月、京都一条の辻に高札が立てられ、猫を繋いで飼うこと、及び猫を売り買いすることが禁じられました。猫に追い回された鼠が仏僧の夢に出てきて窮状を訴える話が、当時の読み物「猫の草紙」に出てきます。ちなみに猫ノ草紙は、佐藤恵美さんのブログの名前でもあります。





 「プライド 誇り」のサポート(用紙)全体のサイズは、余白を含めておよそ 23 x 19センチメートルです。写真に写っている額はインチサイズ(255 x 203 mm)です。ご注文いただいた時点で写真の額が在庫していない場合、同等クラスの他の額をご用意いたします。

 当店ではお客様のお好みに合わせまして、額の変更、マットの変更のご相談に応じます。上の写真に写っているマットには、ワイン・レッドのベルベットを張っています。ワイン・レッドのほか、若草色、菫色がかったブルー、明るいベージュ、黒のベルベット張りマット、及びベルベットを貼らない白色マットまたはカラー・マットも、同価格にてご用意できます。この額を使用する場合、額、マット、工賃を含む額装済み本体価格は 23,800円です。





電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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