ジョン・フィリップ作 「スペイン、ジプシーの音楽家たち」 エキゾチックな少女たち フリードリヒ・ノウルによる細密エングレーヴィング 1860年代

Gipsy Musicians of Spain


原画の作者 ジョン・フィリップ(John Phillip, 1817 - 1867)

版の作者 フリードリヒ・ノウル(Johann Heinrich Friedrich Ludwig Knolle; 1807 - 1877)


画面サイズ  縦 232 mm  横 183 mm



 音楽を奏でるジプシーの少女を描いた作品。ジプシーは紀元前300年頃に北インドから移動を始めた民族集団です。ロム(Rom)またはロマ(Roma)という総称が一般的に使われていますが、彼ら自身の呼称も国(居住地)によって異なり、スペインではカロ(Calo)、ドイツやフランスではシント(Sinto)と名乗っています。他民族からの呼び名としてはスペイン語でヒタノ(Gitano)、フランス語でジタン(Gitan)、ドイツ語でツィゴイナー(Zigeuner)と呼ばれています(以上、いずれも男性単数形)。英語におけるジプシーという呼称は「エジプシャンズ」(Egyptians)が訛化(がか)したもので、彼らがエジプトから来たと自称したことによります。

 音楽は占い等とならんで伝統的なジプシーの生業のひとつであり、スペインのフラメンコもジプシーの音楽に由来します。またこの版画に見られるような華やかな色彩の衣装と装身具も、スペインのジプシー女性の特徴です。

 各国政府の定住政策により、現在では多くのジプシーが住所を定めていますが、本来ジプシーは移動の民でした。この絵が描かれた十九世紀はすべてのジプシーが移動生活を送っていた時代で、この少女達にとっても音楽は楽しみであるだけでなく生活の手段でした。つまりこの少女達は天性の才能を持ったプロの音楽家だったのです。画家ジョン・フィリップを生涯の最後までとりこにした彼女らの音楽はどれほど熱情的ですばらしかったことでしょうか。





《原画の作者について》

 ジョン・フィリップ(John Phillip, 1817 - 1867)はスコットランドの港町、アバディーンに生まれました。塗装職人の見習をしていましたが、1834年に店から逃げ出してロンドンに密航し、王立美術アカデミーの展覧会で見た数々の絵に触発されて、画家になる決心を固めます。政治家パンミュア卿からの援助で絵の勉強をし、やがて王立美術アカデミーにも作品を出展するようになります。

 フィリップの初期の作品はスコットランドの生活を描いた風俗画で、彼が名声を確立したのもこの分野においてでした。しかし1851年、1852年、1860年にスペインを旅し、ベラスケスをはじめとするスペイン人画家たちの熱情的でカラフルな作品と、スペインの田舎の美しい風景に取り憑かれます。とりわけ1852年の旅行以降はスコットランドを題材にすることをやめ、このときから亡くなるまで、スペインをテーマにした絵ばかりを描き続けました。

 フィリップの絵はヴィクトリア時代の画家の作品としては非常に自由闊達で、大胆な構図と輝くように美しい色彩が特長です。フィリップは1859年に王立アカデミー会員になっています。


《版の作者について》

  本品の版を制作したフリードリヒ・ノウル(Johann Heinrich Friedrich Ludwig Knolle; 1807 - 1877)はドイツの版画家で、極めて細密で丁寧な作風が特徴です。ノウルは「アート・ジャーナル」("The Art Journal"の版元、ヴァーチュー社(J. S. Virtue and Co., London)のために、数々のエングレーヴィング作品を制作しています。


《この版画について》

 本品は金属によるインタリオの一種、スティール・エングレーヴィングです。エッチングは酸の腐食作用によって金属板に線を作りますが、エングレーヴィングは人間の手の力で金属板を彫ってゆくため、多大な労力と時間を必要とします。それゆえほとんどのアンティーク・インタリオは主要部分にのみエングレーヴィングを使い、残りはエッチングで制作することも多くあります。

 しかしながら本品の版を制作したフリードリヒ・ノウルは非常に丁寧な仕事をする人で、本品も画面の大部分をエングレーヴィングで制作しています。本品にエッチングが使用されている箇所はごく限られていて、向かって左側の少女が身にまとう明色の布に陽が当たっている部分、右側の少女が抱えるギターの表板、背景の石壁のみで、あとは全面的にエングレーヴィングで制作されています。





 エングレーヴィングによる版画の特性は、エッチングよりも硬質の輝きを有することです。ノウルはジプシー娘の色黒の肌をエングレーヴィングで描いて、若い女性の瑞々しい肌が持つ艶と張りを巧みに再現しています。

 上下の写真に写っている定規のひと目盛りは一ミリメートルです。肌の明部は太さを変えた二種類の破線で、暗部は実践を菱形に交差させたクロスハッチで制作されています。クロスハッチの菱形内部には、彫刻刀の鋭い先端を使い、天のように短い線がひとつひとつに彫られています。








《額装について》

 版画は未額装のシートとしてもご購入いただけますが、当店では無酸のマットと無酸の挿間紙を使用し、美術館水準の保存額装を提供しています。下の写真は額装例で、外寸 40 x 31センチメートルの木製額に、赤色ヴェルヴェットを張った無酸マットを使用しています。この額装の価格は 24,800円です。



 額の色やデザインを変更したり、マットを替えたりすることも可能です。無酸マットに張るヴェルヴェットは緑や青、ベージュ等に変更できますし、ヴェルヴェットを張らずに白や各色の無酸カラー・マットを使うこともできます。

 版画を初めて購入される方のために、版画が有する価値を解説いたしました。このリンクをクリックしてお読みください。





エングレーヴィングの価格 28,800円 (額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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