Ἀκαδήμεια Κῶβε アカデミア神戸 2015年12月13日(日)の授業内容


 私たちが住む世界(宇宙)には、さまざまな物質(ぶっしつ)があります。「物質」というのは、「物」(もの)のことです。すべての物質(物)を細かく切ってゆくと、「原子」(げんし)というものに行き着きます。原子のまんなかには「原子核」(げんしかく)があります。原子核のまわりには、とても小さな「電子」(でんし)というものが、光の速さでぐるぐると周回しています。光の速さは信じられないぐらいに速くて、一秒間に地球を七回半も回ってしまいます。「電子」の数は、「原子核」にある「陽子」の数と同じです。

 宇宙は「ビッグ・バン」という出来事で始まりました。「ビッグ・バン」とは英語で「大爆発」という意味です。ビッグ・バンが起こっておよそ百秒後に、宇宙の温度は十億度まで冷えました。これは最も熱い恒星の中心部の温度とほぼ同じです。「恒星」(こうせい)は英語で「スター」といって、太陽のように、自分の力で輝いている星のことです。

 さて、ビッグ・バンが起こっておよそ百秒後、宇宙が十億度まで冷えたときに、宇宙を飛び回っていた粒の速度が落ちて、「陽子」(ようし)という粒と、「中性子」(ちゅうせいし)という粒が、くっつきました。陽子二個と中性子二個、合わせて四個がくっついて、かたまりになったのです。これが「ヘリウム」という物質の「原子核」です。「ヘリウム」はとても軽い物質で、風船に入っています。「ヘリウム」という言葉は、「太陽」を表すギリシア語から来ています。

 四個くっついて「ヘリウム」になることができた陽子と中性子は、あまり多くありません。「ヘリウム」になれなかった陽子は、「水素」(すいそ)という物質の原子核です。中性子も、陽子と結びついていない場合は十分ほどで陽子に変わりますから、やはり「水素」の原子核になりました。この宇宙には、一個の「ヘリウム」に対して、およそ十個の「水素」があります。


 「水素」も「ヘリウム」も、とても軽い物質です。空気よりも軽いので、風船に入れると、空気中に浮き上がります。空気中に浮き上がるということは、「空気よりも軽い」ということです。風船をたくさん集めて手に持っても、体は浮き上がりません。でも「飛行船」というとても大きな風船を作れば、人間が乗りこんで空を飛ぶことができます。飛行船に水素を使うと危険です。水素はとても燃えやすいからです。昔、ヒンデンブルク号という飛行船が空中で爆発して墜落する大事故がありました。現代の飛行船にはヘリウムが使われています。ヘリウムは燃えないので安全です。

 水素は危険ですが、注意して扱えば良い燃料になります。自動車がガソリンを燃やして走ると、体に悪い物質や大量の二酸化炭素を含む排気ガスが出ます。二酸化炭素が増えたせいで北極や南極が温かくなり、氷が減ってしまいました。そのせいでホッキョクグマの子供が育たなくなったり、島が海面よりも下に沈みそうになったりしています。もしも自動車が水素で走るようになれば、悪い排気ガスではなくて、水が出てきます。ただの水です。水ならば空気も汚れないし、ホッキョクグマも困りませんね。


 さて、ビッグ・バンの百秒後に「ヘリウムの原子核」と「水素の原子核」ができたことはわかりましたね。でも私たちの体は水素やヘリウムでできていません。もしも水素やヘリウムでできていたら、空気中に浮き上がってしまいます。人間の体や、教室のランプの材料になっている鉄は重いので、空中に浮き上がりません。こういう重たい物は、いつどこでできたのでしょうか。

 星(恒星)の寿命は人間の寿命よりもずっと長いですが、いつかは死を迎えます。どういう死を迎えるかは、星の大きさによって違います。太陽よりもだいぶ大きな恒星は、死ぬときに「超新星爆発」(ちょうしんせいばくはつ)という大爆発を起こします。そのとき、重たい物質をまき散らします。超新星爆発によってまき散らされた物質から惑星ができます。惑星で生まれる生き物は、惑星にある物質で体を作ります。でも惑星の物質は、もともと恒星の内部で作られたものなのです。ですから私たちはみな「星の子」です。

 太陽のような恒星は、何百年たっても何千年たっても燃え尽きずに輝き続けます。考えてみると不思議ではありませんか? 木や、石油や、石炭は、すぐに燃え尽きてしまいますから、太陽ではそういうものが燃えているのではありません。だいたい太陽には木は生えていません。石炭や石油も、「化石燃料」といって、昔の生き物の化石ですから、太陽にはありません。太陽がなぜ燃え尽きないのか、昔の人には分かりませんでした。この謎が解けたのは百年くらい前のことです。太陽の内部では「核融合」(かくゆうごう)ということが行われています。「核融合」については別の機会に詳しく説明しますが、私たちの体や惑星の材料になっている重い物質は、要するに、水素やヘリウムを原料にして、「核融合」によって創られたものなのです。原子番号二十六番の「鉄」も、核融合によってできました。恒星の内部で鉄ができ始めると、その星の命はおしまいです。大きな星の内部で鉄ができ始めると、その星はほとんど瞬間的に超新星爆発を起こして、鉄やその他の重い物質をまき散らします。そこから惑星が生まれるのです。


 地球は惑星のひとつです。地球を輪切りにすると、中心に「融けていない鉄」、その周りに「融けた鉄」、その周りに「融けた岩」、いちばん外に「融けていない岩」があります。いちばん外の「融けていない岩」は「地殻」(ちかく)といって、卵の殻みたいに薄い層です。その下にある「融けた岩」は「マントル」といいます。皆さんは温泉に行ったことがありますか? マントルはとても熱くて、温泉はこの熱のおかげで湯になっています。

 物を熱するとまず赤くなり、次に黄色くなり、最後に白く輝きます。マントルは岩ですが、とても熱いので、もしも地上に取り出したとしたら、その瞬間には黄色っぽい色に輝いています。それが冷めると、この宝石になります。これはペリドット、日本語では「橄欖石」(かんらんせき)といいます。「橄欖」(かんらん)というのはオリーヴのことです。綺麗な緑色をしていますね。みなさんはオリーヴの実を食べたことがありますか? オリーヴの実には、黒っぽいものも、緑色のものもあります。この宝石の色は、緑色のオリーヴに似ています。みんなで手に取って観察しましょう。

 マントルがペリドットでできているなら、地球はペリドットだらけであることになります。それなのに、みなさんが手に取っている石の値段は、十六万円もします。これはマントルがとても深いところにあって、ペリドットを取り出すことができないからです。とても深いところにある石が、火山の噴火などによって、たまに地上に出てくることがあります。そのような石は「ゼノリス」といって、地球の内部からはるばる運ばれてきたものです。このペリドットも「ゼノリス」です。「ゼノリス」とはギリシア語で「よその石」という意味です。よそから、つまり地球内部のマントルから、地殻までやって来た石、という意味ですね。


 マントルは融けて流れています。地殻はマントルの上に載っていて、マントルの動きによって運ばれています。みなさんは熱い味噌汁を上から観察して、味噌の粒が動いているのに気付いたことがありますか? マントルもちょうどあれと同じ動きをしています。

 いまから百年くらい前、ドイツのウェゲナーという人は、アフリカ大陸の西岸と南アメリカ大陸の東岸がパズルのピースのようにぴったり合うことに気付いて、「大陸移動説」という考え方を発表しました。実際、アフリカ大陸の西岸と南アメリカ大陸の東岸の形は、水深千メートルの等深線で見ると、見事にぴったりと合います。みなさんは海遊館に行ったことがありますか? 海遊館では「リング・オブ・ファイアー」という展示をしていますね。この地図は海底の地形とプレートの境界、地震の震源、火山を表示しています。海底山脈のところで生まれた新しい海底は、ちょうどベルトコンベアに載せられたみたいに両側に押し出され、やがては海溝に沈んでいきます。ハワイは少しずつ日本列島に近づいています。でもハワイが日本のところまで来たときに、日本列島があるかどうか分かりませんね。




アカデミア神戸 小中学生向け講座 授業内容のインデックスに戻る

アカデミア神戸 小中学生向け講座 トップページに移動する


アカデミア神戸 トップページに移動する




Ἀναστασία ἡ Οὐτοπία τῶν αἰλούρων ANASTASIA KOBENSIS, ANTIQUARUM RERUM LOCUS NON INVENIENDUS