アール・デコ

聖母子


台座の底面のサイズ 50 x 50 mm   台座を含む全体の高さ 224 mm

ドイツまたはオランダ  1930年代頃



 聖母子の上品な顔立ちが魅力的な磁器製小像。手彩色による淡い色合が経年を感じさせ、現代作品とは一線を画した趣があります。





 幼子イエズスは右手を挙げて祝福を与え、左手には十字架のついた球体を手にしています。この球体はグロブス・クルーキゲルあるいはグロブス・クルチジェル(GLOBUS CRUCIGER)と呼ばれるもので、全世界あるいは全宇宙の象徴である球体の上に十字架を載せることにより、幼子イエスが世界の支配者であり神であることを表します。

 右手を挙げて祝福し、左手にグロブス・クルーキゲルを持つ姿は「世の救い主」(SALVATOR MUNDI)としてのイエズスの伝統的表現で、ヤン・ファン・アイク、ハンス・メムリンク、アルブレヒト・デューラー等、北方ルネサンスの画家たちに好んで使われました。この系統のサルヴァトル・ムンディとしては、エルミタージュ美術館にあるティツィアーノの作品、ド・ガネー侯が所蔵していると言われるレオナルド・ダ・ヴィンチの作品もよく知られています。後者についてはヴァザーリが詳しい記録を残しています。





 聖母マリアは世界を表す球体のうえに乗っており、図像学の伝統に則って白い衣に青のマントを羽織っています。この白と青の衣は聖母受胎告知修道会の創始者である聖ベアトリクス・デ・シルバ(1490年没)が幻視した無原罪の御宿りの聖母が身に着けていたもので、15世紀以降のマリア像はこの色の取り合わせで描かれるようになります。

 足元にのぞく金色は聖母の爪先のようにも見えますが、蛇の頭かもしれません。蛇は創世記3章においてエヴァを誘惑した悪魔、あるいは死の象徴です。「新しきエヴァ」として球体の上で蛇を踏み砕く姿は、不思議のメダイの聖母を思わせます。幼子イエズスと聖母マリアの頬は、ともに薔薇色に色づいています。これは受肉のミステリウム(神秘)を表します。





本体価格 25,000円 販売終了 SOLD

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