聖なる幕屋の祈祷書
ブルポル社 トゥルンハウト(ベルギー) 1933年
Missel du Saint Tabernacle
Etablissement Brepols, S. A, Turnhout, 1933
サイズ 14 x 9.5 cm 厚さ 2.5 cm 384ページ
祈祷書はモロッコ革に金箔を押し、天地小口にも金箔、見返しにはマーブル紙を使用しています。
扉の向かいは J. L. ブゾン (Joseph Beuzon et Louis Beuzon, fl. 1896 - 1935) の署名がある作品のタイポグラヴュア(下の写真)で、
サレムの王である大祭司メルキゼデクがアブラム(アブラハム)にパンとぶどう酒を与えて祝福する場面(創世記 14:17 - 20)が描かれています。
ページ全体を占める絵は、この作品以外にも次の3枚があります。(下の各写真。いずれも部分)
砂漠でマナを集めるヘブル人たち (出エジプト記 16章)
使徒たちのコミュニオン
エマオの弟子たち (ルカによる福音書 24:13 - 35)
これらはいずれもエウカリスティアすなわちミサと聖体の予表(前表)と考えられる聖書中の出来事です。
アール・ヌーヴォーの影響が認められる扉の絵はルイ・ブゾンによるもので、上部に聖体を礼拝するふたりの天使を配し、
聖体拝領に使われるパンとぶどう酒の原料である小麦とぶどうの図案で書名と出版社名を囲んでいます。
作品の最下部にキリストを表すギリシア文字キー (X) とロー (P)及びアルファ (A) とオメガ (Ω) の組み合わせ文字があります。
また右下隅にルイ・ブゾンの書名 (LOUIS BEUZON) があります。
祈祷書の本文はフランス語とラテン語で書かれています。
本文を囲む絵は 16種類もあり、いずれもジョセフ・ブゾンの作品です。
絵のテーマは、3世紀の殉教者聖タルキシウス (St. Tarcisius) に関する一点を除き、いずれも聖書に取材しています。
各作品の下部にはラテン語で画題が書かれています。
数種類の絵がページごとに交替し、本文を囲むのは祈祷書によくある形式ですが、
この祈祷書は私がこれまでに目にしたなかで絵の種類が最も多く、さらに印刷のクォリティも最高です。
スクリーン・フォトグラヴュアに引けをとらないほどきめが細かく、リトグラフか古典的なフォトグラヴュアと間違えるくらいです。
私は非常に強い近視で、裸眼で細かいものが見えますが、最初はてっきりフォトグラヴュアだと思いました。
この祈祷書は70年以上前のものですが、まったくと言ってよいほど傷みが無く、新品時のコンディションを保っています。
少女たちの初聖体を記念するたくさんのカードがはさまれていたことからもわかるように、家庭内で常に意識されてきた祈祷書ですが、
大切に保管されて、日常的に使用されてはいなかったようです。
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