アンティークアナスタシア　神戸北野町　聖ヴィアンネ　St. Jean-Baptiste-Marie Vianney, Curé d'Ars

アルスの主任司祭聖ジャン＝バティスト＝マリ・ヴィアンネ
St. Jean-Baptiste-Marie Vianney, Curé d'Ars

　「アルスの主任司祭」と呼ばれる聖ジャン＝バティスト＝マリ・ヴィアンネ (St. Jean-Baptiste-Marie Vianney, dit le Saint Curé d'Ars, 1786 - 1859) はリヨン近郊ダルディリ (Dardilly) の農家に生まれました。両親はたいへん信心深い人たちで、常に貧者を助け、ローマ巡礼のために徒歩で旅行していた浮浪者の守護聖人、聖ラブル (St. Benoît Joseph Labre, 1748 - 1783) を自宅に宿泊させています。

　フランス革命の時代、教会の活動は禁止されましたが、司祭たちは殉教の危険を冒して隠れ家に潜伏し、窓をすべて蔽って極秘裏にミサを挙げていました。ヴィアンネ一家は遠くの農家で行われるミサに出席し、ジャン＝バティスト＝マリは民家でこっそりと教理問答を教わり、自宅で初聖体を受けました。

　1801年に当時の第一執政ナポレオンと教皇ピウス7世の間で政教条約が結ばれてフランス国内のカトリック教会が回復しました。ジャン＝バティスト＝マリはフランス革命のために初等教育を中断されていましたが、1802年、19歳のときに、近くの少し大きな町エキュリ (Ecully) の主任司祭バレ (Balley) 師が運営する神学校に入り、11～12歳の同級生と机を並べてラテン語、歴史、算術、地理を習いました。十分な初等教育を受けていないジャン＝バティスト＝マリは習得に苦労しましたが、司祭になりたいという望みを捨てずに努力を続けました。

　ジャン＝バティスト＝マリ・ヴィアンネはたいへん敬虔な若者であったので、司祭になることに反対する教会の長上はいませんでしたが、手続きの誤りによってスペイン独立戦争に徴用されてしまいました。ところがちょうどそのころ体調が優れなかったジャン＝バティスト＝マリは行軍に後れて部隊に復帰できず、道に迷ったままある村に教師として残ることになりました。その後ジャン＝バティスト＝マリの代わりに弟が入隊したので、ジャン＝バティスト＝マリは棄隊の罪に問われることなくエキュリの神学校に復帰し、1815年に司祭に叙階されました。司祭になったジャン＝バティスト＝マリはバレ師の教会に配属されますが、1818年、師の没後に、当時人口 200人ほどの小村であったアルス (Ars) の主任司祭となりました。

　アルスでのジャン＝バティスト＝マリ・ヴィアンネ神父は、日々の仕事にのみ埋没していた村人たちの霊性を、神へと高めることに全力を注ぎました。村人たちに教理問答を教え、教会の保守や墓地の再整備を指導し、乱痴気騒ぎの場と化していた祝祭を厳かなものに改めました。1824年には女子児童たちのために学校を作って「摂理の家」と名付け、教理問答を習得した少女に運営を任せました。1830年には神父の説教を聴くために遠方からも人が集まるようになりました。1849年には男子児童のための学校も作りました。神父の説教を聴きにアルスを訪れる人たちは、1855年には年間 2,000人にも達しています。ヴィアンネ神父の模範的な聖性、説教、熱意によって、村人たちの霊性は徐々に高まってゆきました。

　ヴィアンネ神父はたいへんよく祈る人で、凍てつくような朝も早くから教会で祈っていました。また昼間の時間はすべて村人の告解を聴くのに充てていました。晩年の10年間は毎日16時間ものあいだ告解を聴いたといわれています。食事の量もきわめて少なく、夜もほとんど眠らず、自分が得るものはすべて施しにまわして自分よりも貧しい人の必要に充てました。

　教皇ピウス10世は 1905年、ヴィアンネ神父を列福し、「フランスの司祭の守護者」と宣言しました。教皇ピウス11世は 1925年に神父を列聖し、1929年には「全世界の司祭の守護者」と宣言しました。1945年にはロンカッリ枢機卿がアルスを訪問しました。ロンカッリ枢機卿はのちに教皇ヨハネス23世（Ioannes XXIII, 在位 1958 - 1963）になった人です。また 1986年には教皇ヨハネ・パウロ2世がアルスを訪問し、2009年は聖人没後 150年の贖宥の年となりました。今日、アルス＝シュル＝フォルマンには年間45万人もの巡礼者が訪れています。