トレントのシモン
Simonino di Torento, Simon von Trient



(上) シェーデル版「ニュルンベルク年代記」におけるトレントの事件の記録


 1475年、トレントに住む3歳の男の子シモンあるいはシメオン (Simonino di Trento, 1472 - 1475) が行方不明になり、遺体で発見されるという痛ましい事件がありました。当時トレントでは反ユダヤ感情が高まっており、シモンはユダヤ人による儀礼殺人の犠牲になったと考えられて、当地のユダヤ人の指導者を含む男女18名が逮捕され、苛烈を極めた拷問の末、ほとんどが犯行を自供して火刑に処されました。またトレントに住んでいた残りのユダヤ人も、全員が追放されました。

 シモンはユダヤ人に殺された殉教者と看做されて、イタリア、ドイツを中心に崇敬が広まり、教皇シクストゥス5世 (Sixtus V, 1520 - 1585 - 1590) によって「誘拐され拷問を受ける者の守護聖人」と宣言され、列聖されました。

 しかしながら近年になって、第二ヴァティカン公会議の終わり(1965年)にトレントの事件について再調査が行われた結果、ユダヤ人に対する嫌疑が事実無根であったことが確かめられ、教皇パウルス6世 (Paulus VI, 1897 - 1963 - 1978) は少年殉教者聖シモンに対する崇敬を禁止しました。


 トレントのシモンの事件はブラッド・ライブル(血の中傷)の代表的な一例で、「ニュルンベルク年代記」にも載っています。シモンの事件の背景と裁判記録に関しては、ペンシルヴァニア州立大学のロニー・ポチャシャー教授による次の著作に詳しい記述があります。

Prof. Ronnie Po-chia Hsia, "Trent, 1475: Stories of a Ritual Murder Trial", Yale University Press, 1992, ISBN 978-0300068726

(邦訳 「トレント1475年―ユダヤ人儀礼殺人の裁判記録」 ISBN 978-4812207406)




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