フランス南西部、ピレネーのふもとにある古い巡礼地、ロカマドゥールのメダイ。
表(おもて)面にはロカマドゥールの黒い聖母子像を浮き彫りにしています。聖母子はともに戴冠し、聖母子の一体性を強調する衣に包まれて盛装しています。本品に彫られた聖母子像の高さは約 1.5センチメートル、聖母子の顔は直径1ミリメートルという極小サイズであるにもかかわらず、聖母子の眼鼻立ちや冠の細かな細工、衣やヴェールの襞、細かい刺繍や房までが、大型の彫刻作品と変わらない正確さで再現されており、メダイユ芸術が発達したフランスにおいて、優れたメダイユ彫刻家が有する芸術的才能と職人的技量に圧倒されます。
聖母の姿はメダイ中央の天地いっぱいに表されていますが、これは聖母マリアが救い主の受胎を受け容れることによって、天と地をつなぐ恩寵の器となったことを表しています。聖母は目を半ば閉じ、かすかな微笑を浮かべて、巡礼に訪れる者たちの願いに耳を傾けています。また幼子イエズスは聖母の左ひざに乗っているため、体の位置が中央から向かって右に少しずれていますが、これは天に上げられた聖母が「イエズスの右の座」にいることを表しています。
メダイの裏面にはロカマドゥールの聖地を浮き彫りにしています。雄大なピレネーの山懐深く抱かれた聖地ロカマドゥールが、背景の大空に沸き立つ雲とともに、直径2センチメートル足らずの空間に再現されています。本品が優れた芸術家の作品であることは確かですが、メダイユ彫刻家のサインは見当たりません。いったい誰の作品でしょうか。
写真では分かりませんが、聖母子像の浮き彫りは立体的で、体は丸みを帯び、聖母子の頭部はメダイ表面から突出しています。それにもかかわらず磨滅の程度はごく軽く、顔の細部も失われていません。数十年前に制作された真正のヴィンテージ品としては、たいへん良好な保存状態といえます。
ロカマドゥールは古来有名な巡礼地ですが、19世紀以来、同じピレネー山中のルルドに押されて、メダイの数はそう多くありません。またロカマドゥールの聖母のメダイはたいへん素朴な作風の物が多く、本品は私がこれまでに見た中で最も芸術的完成度が高い作品です。お買い上げいただいた方には必ずご満足いただけます。
本体価格 9,700円 販売終了 SOLD
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