ベルギーで最も有名な聖母マリアの巡礼地、モンテギュの聖母の古いメダイ。ブロンズに銀めっきを施してあります。19世紀末のアール・ヌーヴォー期にベルギーまたはフランスで制作されたもので、植物を連想させる優美な曲線は、この時代の聖品ならではのデザインです。
表(おもて)面には、シェーヌ(ブナ)の樹上にあるモンテギュの聖母を浮き彫りにしています。聖母子は戴冠し、聖母は右手に笏(しゃく)を持ち、左腕に幼子イエズスを抱いています。聖母のシェーヌの根元には、美しい花が咲き乱れています。聖母子の左右にアルベール(アルブレヒト)とイザベル(イサベル)の大公夫妻が跪き、胸の前に手を合わせています。夫妻の足下には、それぞれ「アルベール」(ALBERT)、「イザベル」(ISABELLE)
と記されています。
(下) 小フランス・プルビュス(ポルビュス)による大公夫妻の肖像画。ブリュージュ、グルニング美術館蔵。
いわば人々の代表として奇蹟の聖母に手を合わせる大公夫妻から、聖母に執り成しを願う祈りの言葉が天に立ち昇っています。
Notre-Dame de Montaigu, priez pour nous. モンテギュの聖母よ、われらのために祈りたまえ。
この光景を取り囲むように、聖母の象徴である白百合がメダイの左右に浮き彫りにされています。百合は上部、下部とも長く伸びてメダイの縁取りと一体化しており、アール・ヌーヴォー様式そのものの意匠を形作っています。
メダイの裏面には聖母と純潔の象徴である白百合が浮き彫りにされています。白百合が聖母の象徴とされるのは、旧約聖書の恋の歌、「雅歌」2章2節にある次の聖句によります。
Sicut lilium inter spinas, sic amica mea inter filias. (Nova Vulgata) おとめたちの中にいるわたしの恋人は 茨の中に咲きいでたゆりの花。
(新共同訳)
商品写真は実物を約60倍の面積に拡大していますので、突出部分の磨耗がよくわかりますが、実物を肉眼で見ると、十分に美しいコンディションです。この程度の摩耗は真正のアンティークならではの趣(おもむき)として楽しんでいただけることと思います。