最初期に属するラ・サレットの聖母の稀少なメダイ。高さ4センチメートルに近い大きなサイズで、19世紀半ばのメダイの標準的な材質であるブロンズで製作されています。
一方の面には、ふたりの牛飼いの子供、15歳の少女メラニー・カルヴァと11歳の少年マクシマン・ジロー に、ラ・サレットの聖母が出現した場面が浅浮き彫りにされています。聖母は子供たちに向かって預言を語り、祈りを勧め、子供たちは聖母の言葉に耳を傾けています。三人の足下には犬が寝そべっています。群像の周囲には、次の言葉がフランス語で記されています。
Notre-Dame de la Salette, priez sans cesse pour nous. ラ・サレットの聖母よ。我らのために常に祈りたまえ。
メダイのもう一方の面には、ラ・サレットの聖母出現の場所に建てられた聖堂が、精緻な浅浮き彫りによって表されています。三次元的な奥行きを感じさせる出来栄えに、彫刻家の優れた技量がうかがえます。周囲には次の言葉がフランス語で記されています。
Sanctuaire de Notre-Dame de la Salette ラ・サレットの聖母の聖地
この聖堂は 1865年に完成し、1879年にはバシリカとされましたが、このメダイの銘においてはバシリカとして言及されていないことから、メダイの製作年代は1860年代後半、または1870年代と考えられます。
ノートル=ダム・ド・ラ・サレット(ラ・サレットの聖母)のメダイはいずれも稀少ですが、なかでも本品は年代、意匠、サイズとあらゆる点で最も珍しい作例です。140年以上も前のものでありながらたいへん良好な保存状態で、部分的に酸化が見られるものの、図柄はまったく磨滅しておらず、制作当時のままの状態です。