モンペリエの聖ロックと愛犬ロケ 《病める者に救いをもたらし給う御方よ、我らのために祈り給え》 精緻な浮き彫りの円形メダイ 直径 16.4 mm フランス 1920
- 50年代
突出部分を除く直径 16.4 mm 最大の厚さ 2.5 mm 重量 1.9 g
中世以来、西ヨーロッパで最も人気がある聖人のひとり、モンペリエの聖ロックのメダイ。表面に聖人と愛犬を、裏面に咲き誇る薔薇を、いずれも精緻な浮き彫りで表現しています。
伝統的図像表現において、聖ロックは貧しい巡礼の身なりで表されます。巡礼姿はサンティアゴ(聖ヤコブ)と似ていますが、聖ロックは多くの場合犬を連れ、脚にできた腺ペストの傷痕を露出しています。本品の聖ロックも右手に巡礼の長い杖を持ち、衣の裾をたくし上げた左手で、腺ペストの傷痕を指し示しています。杖の上部に括りつけられているのは、道中の飲み水を入れたひょうたんです。浮き彫りを囲むように、執り成しを願う祈りの言葉がフランス語で刻まれています。
Secour des malades, priez pour nous. 病める者に救いをもたらし給う御方よ、我らのために祈りたまえ。
本品メダイにおいて、聖ロックはスクール・デ・マラド(仏 Secour des malades 病者たちの救い)、すなわち病める者に救いをもたらし給う御方と呼びかけられています。聖ロックは病者の祈りを神に取り次ぐ聖人であって、病を癒すのは神ですが、あたかも聖ロック自身が病を癒してくださるかのような祈りの言葉には、人々がこの聖人に寄せる熱烈な信頼が反映されています。
聖人の右側(向かって左側)には愛犬ロケ(Roquet)がいて、両前脚を聖人に掛けて甘えています。ロケの口に咥えられているのは、闘病中の聖人の命を繋いだパンです。ロケは常に聖ロックとともに図像に表されることから、いつも一緒にいるひとたちのことを「聖ロックと犬みたいだ」(仏
C'est St. Roch et son chien.)と言います。またふたつのものが不可分であることを、「聖ロックが好きならその犬も好き」(仏
Qui aime St. Roch, aime son chien.)と言います。
メダイの裏面には、美しい薔薇が浮き彫りにされています。刺の無いロサ・ミスティカは無原罪の御宿り(聖母マリア)の象徴ですが、本品の薔薇には刺があるように見えます。
十九世紀のフランスでは日本美術の影響を受けて、アール・ヌーヴォーと呼ばれる装飾美術の様式が生まれました。アール・ヌーヴォーの工芸品は、自然主義的(写実的)に描写した草木虫魚の左右非対称モティーフが愛されました。本品メダイは二十世紀の作品ですが、裏面に彫られた左右非対称の自然主義的な薔薇に、アール・ヌーヴォーの残響を聞き取ることができます。
上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。
本品は数十年前のフランスで制作されたメダイで、その趣(おもむき)は現代の作品と一線を画します。聖ロックは流行病から守ってくれる守護聖人であるとともに、犬と愛犬家、皮膚や膝に病気がある人、障害者、いわれ無き中傷に苦しむ人、外科医、ネクタイ職人、墓掘り人夫、古物商、巡礼者の守護聖人です。聖ロックの祝日は
8月 16日です。
本体価格 8,800円 販売終了 SOLD
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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