帆も舵も無い小舟に乗り、パレスティナを脱出してカマルグに上陸したふたりの聖マリア(マリア・ヤコベとマリア・サロメ)のメダイ。小舟には上記のふたりに加えてマグダラのマリアも乗っていましたが、他に同乗していた聖人たちの名前と人数は伝承によって異なります。
メダイの表(おもて)面には櫂を手にする天使に加え、三人の人物が浮き彫りにされています。真中に立っているのがマリア・ヤコベとマリア・サロメ、向かって左端の小柄な人物が聖女たちに仕える少女サラです。メダイに彫られた聖女たちはいずれも美しく均整が取れており、丸みを帯びてしなやかな体つきはあくまでも女性らしく、整った顔立ちには優しい表情を浮かべています。実物のメダイを測ると、聖女たちの顔のサイズは直径わずか1ミリメートル程です。このメダイを製作した彫刻家が、いかに優れた技量の持ち主であったかが、よくわかります。聖女たちの周りには、フランス語で次の言葉が刻まれています。
Saintes Maries, priez pour nous. ふたりの聖マリアよ、我らのために祈りたまえ。
上部の環には「フランス」(FRANCE) の刻印があります。
メダイの裏面には聖女たちの聖遺物が見つかった聖堂、サント=マリ=ド=ラ=メール (Saintes-Maries-de-la-Mer) が、石材のひとつひとつまで克明に写した精緻な浮き彫りで表されています。周囲にはフランス語で「サント=マリ(ふたりの聖マリア)のバシリカ」(Basilique
des Saintes-Maries) と刻まれています。
本品はおよそ100年前のメダイであるにもかかわらず、全体的にたいへん良いコンディションです。写真は実物の面積を 80倍近くに拡大していますので、肉眼で見えないような細かい疵もよく見えますが、実物は綺麗です。