ラ=サント=ボームの荒野で禁欲の生活を送るマグダラのマリアのメダイ。
表(おもて)面に浮き彫りにされた聖女マグダラのマリアは、左手に十字架を持ち、右手を心臓のあたりに当て、瞑目しつつ祈りを捧げています。ヴェールで被われていない長く豊かな髪は、マグダラのマリアのアトリビュート(英
attribute 聖人を同定するための図像学的特徴)です。
聖女の周りにはフランス語で「サント・マドレーヌ」(仏 Sainte Madeleine 聖マドレーヌ)と記されています。左手の下方、メダイの縁に近い部分に、グラヴール(仏
graveur メダイユ彫刻家)のサインが彫られています。
メダイの裏面にはフランス語で「サント・ボーム」と記されています。「サント・ボーム」(仏 Sainte Baume)とは「聖なる洞窟」という意味で、フランスに来たマグダラのマリアが改悛と苦行の生活を送るために居を定めた洞窟を指します。
本品は二十世紀後半のフランスで制作されたヴィンテージ品です。制作年代は比較的新しいですが、現代の品物のような安っぽさはありません。半艶消し処理を施されたメダイが発散する金色の柔らかい光が、安住の地を見出した聖女の魂を包み込む神とキリストの愛を視覚化しています。