素晴らしい出来栄えのフランス製アンティーク・メダイユ。直径2.5センチメートルを超える立派なサイズで、手に取ると心地よい重みを感じます。
メダイの一方の面には、イエズス・キリストの上半身を立体的な浮き彫りで大きく表しています。十字架のある後光を戴いたキリストは、愛に燃える聖心を指し示し、右手を差し出して罪びとを招いています。両手にある生々しい傷は、受難の際の釘によるものです。聖心は茨に取り巻かれ、槍による傷から血を流しています。上部には十字架が突き立てられています。聖心から発出するまばゆい光は、神の愛と智恵、すなわち神そのものの象徴です。
キリストの向かって右側、メダイの縁に近い部分に、フランスの彫刻家、エルンスト・レヴィヨン (Ernest Révillon) のサイン (REVILLON)
が刻まれています。レヴィヨンは第一次世界大戦(1914 - 18年)の頃に最も活躍した彫刻家ですので、本品は 1920年5月13日、ベネディクトゥス15世によりマルグリット=マリが列聖された記念に製作されたものと思われます。
【下・参考画像】 ヴェルダンの戦いの勲章 レヴィヨンのメダイユの代表作です。
【下・参考画像】 パリの南50キロメートルのバルビゾン、エルンスト・レヴィヨン通りにあるサン=ポール礼拝堂。手前の彫刻はエルンスト・レヴィヨンの作品です。
もう一方の面に17世紀フランスの聖女マルグリット=マリ・アラコックの上半身を立体的な浮き彫りによって大きく表します。マルグリット=マリ・アラコック (Ste. Marguerite-Marie Alacoque, 1647 - 1690) は聖母訪問会の修道女で、聖心に対する信心をフランスに広めたことで知られています。マルグリット=マリは1864年に列福されましたが、聖女がキリストから受けた1689年の啓示が、列福三年後の1867年に公開された書簡で明らかになり、これが大きなきっかけとなって、フランスを聖心に奉献する「悔悛のガリア」の運動が盛んになりました。
このメダイの浮き彫りにおいて、聖女は両手を胸に当てて、神と対話しています。聖女は両眼を開けていますが、その心は魂の内面に沈潜し、聖女の魂の眼はひたすら神にのみ向けられています。聖女に執り成しを求めるフランス語の祈りが、周囲を取り巻いています。
Sainte Marguerite-Marie Alacoque, priez pour nous. 聖マルグリット=マリ・アラコックよ。我らのために祈りたまえ。
写真では見えにくいですが、聖女から向かって左下、メダイの縁に近い部分に、エルンスト・レヴィヨンのサイン (REVILLON) が刻まれています。
本品は類品の中でも際立って立体的な浮き彫りが特長です。商品写真は実物の面積を百倍に拡大してあるために、最も突出した部分における銀めっきのわずかな磨滅が判別可能ですが、実物を肉眼で見るとたいへん綺麗です。百年近く前に制作された真正のアンティーク品とは俄かに信じ難いほどの、新品に近いコンディションです。