フランチェスコ会の修道服に身を包んだアッシジの聖フランチェスコを浮き彫りにしたメダイ。聖人は粗衣を着て、荒縄をベルト代りにしています。聖人像を取り囲む立体的な文字により、「サン・フランソワ」(Saint
François 聖フランチェスコ)と記されています。聖フランチェスコは胸に手を当てて顔を斜め上方に向け、キリストあるいは神を仰いでいますが、聖人の姿は背後の十字架と重なっており、手にはキリストと同じ磔刑の釘の傷が、十字架から懸垂する体の重みで引き裂かれ、大きく広がっているのが見えます。
メダイユ彫刻家のサインはありませんが、この作品はフランスの彫刻家カロ (Karo) によるものです。上部の環には800シルバーを表すフランスのホールマーク(蟹)、及びフランスのメダイユ工房の刻印
(十字架にAP) が刻印されています。カロ (Karo) という彫刻家の経歴について私は詳しく知らないのですが、この人の作品はどれも細部まで丁寧に製作され、人物も風景もまるで眼前にあるかのように表現する優れた出来栄えです。このメダイも例外ではなく、聖フランチェスコの優しい人柄と敬神がその全身からあふれ出るのが、まざまざと感じ取れます。
本品は摩耗も無く、たいへん良いコンディションです。デザイン面においても、美しい物が多いフランスのメダイのなかでも特に優れた作品といえましょう。