名品 子供を守る守護天使 愛情深き庇護者ヨセフ 不可視の愛を発出するメダイ 直径 19.4 mm


突出部分を除く直径 19.4 mm

フランス  1920年代



 一方の面に子供を見守る守護天使を、もう一方の面に幼子イエスを抱く聖ヨセフを、それぞれ浮き彫りにしたフランスのメダイ。





 一方の面の画面下半分には、二人の子供の姿が見えます。背景に立木があることから、子供は野外にいることがわかります。大きいほうの子が輪を、小さいほうの子が棒切れを持っています。ふたりは棒で輪を転がす「車輪回し」の遊びをしていたのでしょう。子供たちの後ろには井戸があります。走り回って遊んだせいでのどが渇いて、水を飲みに来たようですが、危険なことに小さいほうの子は井戸の縁に腰掛け、お姉ちゃんとふざけ合っています。子供たちのすぐ後ろには守護天使がいて、小さい子が井戸に落ちないように守っています。



(上) サー・トーマス・ローレンスの「カルマディの子供たち」に基づくアンティーク細密画 75 x 66 ミリメートル 当店の販売済み商品


 メダイに彫られた二人の子供は、サー・トーマス・ローレンス (Sir Thomas Lawrence, 1769 - 1830) の名画「カルマディの子どもたち」("The Calmady Children", 1823) に基づいています。この作品はメトロポリタン美術館に収蔵されています。




(上) Giorgio De Chirico, "Mystère et mélancolie d'une rue", 1914, Huile sur toile, 90.9 x 59.1 cm, die Hamburger Kunsthalle


 サー・トーマス・ローレンスの原画において、二人の幼女は手に何も持っていません。メダイに彫られた二人の子供が棒と輪を持っているのは、本品を作ったメダイユ彫刻家による独自の工夫です。「車輪回し」で転がる輪のいつなんどき倒れるか分からない不安定さは、この作品において子供の命の不確かさを表すとともに、子供が無事に育つことを願う大人たちの心からの祈りを映しています。

 筆者(広川)が「車輪回し」で連想したのは、ハンブルク美術館に収蔵されているキリコ (Giorgio De Chirico, 1888 - 1978) の油彩「ある街路の神秘と憂鬱」("Mystère et mélancolie d'une rue", 1914) です。「ある街路の神秘と憂鬱」はキリコが 1914年にパリで制作した作品で、寂しい通りで一人遊ぶ少女を描いています。少女が駆けて行く先には得体の知れない人物の大きな影があり、何度見ても不安な気持ちになります。本品を制作したメダイユ彫刻家がキリコの作品を意識していたかどうかわかりませんが、一抹の翳りも無く明るい「カルマディの子どもたち」に不安感を導入する小道具として、キリコの絵から棒と輪を移入したのであれば、その意図は見事に実現しています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。天使と二人の子供の顔は直径 2ミリメートルに足りませんが、子供の全身には何の警戒心も無く遊ぶ無邪気さが、天使の顔と仕草には庇護する者の愛が、それぞれよく表現されています。メダイの左端に彫刻家の署名があります。





 もう一方の面には幼子イエスを抱く聖ヨセフが表されています。ヨセフは伝統的イコノロジー(図像表現)にしたがって年長の男性として表されており、右腕と体の間に白百合を挟んでいます。白百合は純潔の象徴であるとともに、神に選ばれた身分の象徴であり、神の摂理に信頼する信仰の象徴でもあります。聖ヨセフならずとも、子供を持つすべての男性は子供の父、守護者として選ばれたのであり、聖ヨセフが持つ白百合は、聖人ではない我々にも神から委ねられた保護者としての身分を思い出させてくれます。

 本品に彫られた聖ヨセフの頭部には後光があり、幼子イエスの頭部にはいっそう明るく輝く後光がありますが、これらの後光が無ければ二人の姿はどこにでもいる父子と変わりません。幼子は父の胸にもたれかかって甘え、左腕で幼子を支える父は、右手で幼子の手を取っています。聖父子を刻んだメダイにもさまざまな作風の作品がありますが、本品は父子の睦(むつ)み合う様(さま)を、あたかもバロックの聖母子像のように優しい感情を籠めて表現しています。本品は、聖父子像が表しうるさまざまな象徴的意味のなかでも、父子の愛を特に強調した作例となっています。




(上) 1957年の「イエスとマリアの聖心のメダイ」 当店の商品です。


 なお父子に通う愛があふれるこの浮き彫りは、1957年にフランスで制作された「イエスとマリアの聖心のメダイ」に刻まれているものと同一です。本品の制作年代は 1920年代頃と思われますので、1957年のメダイには、評価が高かった本品の聖父子像が再び採用されたのでしょう。





 上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。一ミリメートルから二、三ミリメートルという極小サイズの各部に表された不可視の愛が、メダイユ彫刻から発出するようにさえ感じられる聖父子像の出来栄えは素晴らしく、見飽きることがありません。





 本品は数十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、保存状態は極めて良好です。突出部分にも磨滅はほとんど認められず、細部に至るまで制作当時の状態のまま残っています。





本体価格 14,700円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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