象牙色のプラスチックでできた盾形の台座に、金属製の円形メダイを取り付けたゆりかご用メダイユ。中央の金属製メダイには若きマリアの横顔を打ち出し、金色の枠で囲んでいます。金色の部分には、アンティーク・ファイン・ジュエリー(貴金属製の高級ジュエリー)に施される彫金細工、「ミル打ち」を模した点状の突起が並んでいます。
若きマリアは優れた信仰心ゆえに神に選ばれ、透き通るような薄絹で出来た花嫁のヴェールを被っています。すなわちマリアは神の花嫁、受胎告知の聖母として表されているのです。
天使ガブリエルから受胎を告知されたとき、マリアは10代半ばの少女でした。突然家の中に入ってきた天使から、「喜びなさい、女よ、あなたから救い主が生まれます」と告げられる、という異常な出来事を経験したにもかかわらず、マリアはあたかも神に感謝するかのように天に眼差しを向け、口許にはかすかな微笑みさえ浮かべています。アブラハムやヨブにも勝り、救い主の母となるべく神の眼に適(かな)ったマリアの信仰が、優れたメダイユ彫刻家により、直径25ミリメートルのメダイ上に、見事に形象化されています。
絵画と違い、色彩を使えない浮き彫り彫刻で、透き通るヴェールを表現するのはたいへん難しいことですが、マリアが被る本品のヴェールは、薄さ、柔らかさが巧みに再現されています。この作品を制作したメダイユ彫刻家が如何に優れた技量の持ち主であったかがよくわかります。
上部に取り付けた環は花をデザインした美しいもので、厚みのある金属で製作されています。古いメダイであるにもかかわらず、摩耗や破損等の問題は無く、たいへん良好なコンディションです。