プット(翼がある幼い男の子)の姿で表されたケルブ(天使)のメダイ。アイボリー・カラーのオールド・プラスティック製台座に、打ち出し細工の金属製メダイを嵌め込んでいます。雲の上、天上の世界にいるケルブは、左肘をついて手に顎を乗せ、さらに上を見上げています。
金属部分の縁に近いところに、二人のメダイ彫刻家、ペナン (Penin) とポンセ (Poncet) の名前が刻印されています。リュドヴィク・ペナン
(Ludovic Penin, 1830 - 1868) とジャン・バティスト・ポンセ (Jean-Baptiste Poncet, 1827
- 1901) はいずれもリヨンのメダイユ彫刻家で、多くの共作を発表しています。本品の制作時期は20世紀中頃であることから、19世紀の型を使って製作された作品であることが分かります。
本品のケルブは背中の翼を両方とも広げていますが、「サン・シストの聖母(システィナの聖母)」の画面下方に描かれたふたりのケルビムに想を得ています。退屈そうな表情と仕草が微笑みを誘います。
(下) Raffaelo Sanzio, Madonna Sistina, 1512 - 14, oil on canvas, 265 x 196 cm, Gemaedegalerie Alte Meister,
Dresden
第二次世界大戦当時、この作品はドレスデン美術館にありましたが、ヒトラーの命により地下室に保管されていたために、連合軍のドレスデン空襲による破壊を免れました。第二次世界大戦後、いったんモスクワに運ばれましたが、その後ドレスデンに返却され、現在に至っています。
このゆりかご用メダイは、古いものであるにもかかわらず、良好なコンディションです。上部の突出部分がプラスティックでできているのも、いかにもゆりかご用メダイらしく、優しい印象です。