プット(幼い男の子)の姿で表されたケルブ(天使)のメダイ。ラファエロ作「サン・シストの聖母(システィナの聖母)」の画面下方に描かれたふたりのケルビムのうち、左側のケルブを浮き彫り彫刻で再現した作品です。雲の上、天上の世界にいるケルブは、左肘をついて手に顎を乗せ、さらに上を見上げています。退屈そうな表情と仕草が微笑みを誘います。
ゆりかご用メダイには珍しく、本品はブロンズを鋳造して作られており、91グラムの重量があります。浮き彫りは立体的で、ラファエロのケルブに見事な三次元性を与えています。
ケルブの背景には雲が表現されています。雲のように不定形のガス状のものは、絵具で表現するのは容易ですが、彫刻で表現するのは非常に難しいことです。しかしながら本品を制作した彫刻家は全く自然に雲を表現し、幼い男の子の柔肌とともに、メダイユ全体に優しい雰囲気を与えています。生き生きとした男の子の表情、いくぶんくせ毛である髪、翼の羽毛の表現も、あたかも生身の天使を眼前にするかのように臨場感にあふれています。作者のサインは見当たりませんが、並外れた才能を持つメダイユ彫刻家であったことがわかります。
(上) Raffaelo Sanzio, Madonna Sistina, 1512 - 14, oil on canvas, 265 x 196 cm, Gemaedegalerie Alte Meister,
Dresden
ラファエロ作「サン・シストの聖母(システィナの聖母)」は、第二次世界大戦当時ドレスデン美術館にありましたが、ヒトラーの命により地下室に保管されていたために、連合軍のドレスデン空襲による破壊を免れました。第二次世界大戦後、いったんモスクワに運ばれましたが、その後ドレスデンに返却され、現在に至っています。
このゆりかご用メダイは数十年前のフランスで制作された真正のヴィンテージ品ですが、古い年代にもかかわらず良好な保存状態です。小さなめっきの剥がれはありますが、特筆すべき問題は何もありません。実物を見ていただければお分かりいただけますが、実際の商品は写真よりもずっときれいです。色と明暗の差は肉眼で見たときよりも格段に強調されて写真に写ります。写真ではめっきの剥がれや小さな疵(きず)が目立ちますが、商品の実物を肉眼で見ても、ほとんど気づきません。
なお上部に外付けされた環は溶接で閉じられているので、ゆりかごの上に吊るしても落下する心配はあまりありませんが、ゆりかご用メダイとしては例外的に重いので、赤ちゃんの真上には懸けないでください。