一方の面に聖心を示すイエズス・キリスト、もう一方の面に幼子イエズスを腕に抱く聖心の聖母を、それぞれ浮き彫りにしたメダイ。20世紀前半にフランスで制作されたもので、指先に載る小さなサイズにもかかわらず、メダイの両面には驚くべき精緻さで浮き彫りが彫られています。
一方の面には、イエズス・キリストの姿が浅浮き彫りで表されています。イエズスは愛に燃える聖心を右手で示し、胸を開いて罪びとを招いています。上部の環に「フランス」(FRANCE)
の刻印があります。
もう一方面には、幼子イエズスを抱く聖母の姿が浅浮き彫りで表されています。聖母子の冠は、ふたりが天上なる栄光の座にあることを表します。 聖母はイエズスとともに戴冠し、イエズスの右にいます。聖母に抱かれる幼子イエズスは右手を上げて人々を祝福し、愛に燃える聖心を左手で示しています。聖母は救いに至る道、すなわちイエズスを胸の前に抱きあげて人々に示し、幼子の胸に輝く聖心を右手で指し示しています。聖母は慈愛あふれる仕草で幼子のほうに顔を傾げていますが、母子は互いに見つめ合わずにむしろ視線を前に向けて、聖母子を見る者に語りかけ、睦み合う愛のなかへと招いています。聖母の周囲には次の言葉がフランス語で記されています。
Notre-Dame du Sacré-Cœur, priez pour nous. 聖心の聖母よ、我らのために祈りたまえ。
本品は指先に載る小さなサイズで、人物の顔は約1ミリメートルしかありませんが、顔の表情、衣の襞(ひだ)まで克明に表現されています。私がこれまで目にしたなかで最も精緻な浮き彫りのひとつです。真正のアンティーク品であるにもかかわらず、メダイのコンディションは良好で、浮き彫りの細部も磨滅することなく、よく残っています。