一方の面にはイエズスとその聖心、もう一方の面には無原罪の御宿りの聖母をそれぞれ浮き彫りにしたメダイ。わが国で言うと、ちょうど幕末の頃に製作されたものです。いずれの面にも四つ葉形と正方形を組み合わせたゴシック様式の枠が採用され、さらにアンティーク・ジュエリーのミル打を模した細工で飾られて、たいへんクラシカルな印象のメダイとなっています。
一方の面に刻まれたイエズスの両手には、釘を打たれた痛々しい傷跡があります。そのような仕打ちにもかかわらず、イエズスは左手で愛に燃える聖心を示し、右手を見る者に向け、限りない神の愛を以って罪びとを招いています。メダイの縁に近い部分の刻印から、1860年代のフランスを代表するリヨンのメダイ彫刻家、リュドヴィク・ペナン
(Ludovic Penin, 1830 - 1868) による作品であることがわかります。
もう一方の面には胸の前に両手を合わせ、天を仰ぎ見る聖母の姿が浮き彫りにされています。聖母を囲むマンドーラ(紡錘形の光背)には、次のラテン語が記されています。
REGINA SINE LABE CONCEPTA ORA PRO NOBIS. 罪無くして宿りたまえる女王よ、我らのために祈りたまえ。
マンドーラの両横にあるAとMの組み合わせは、ラテン語で「マリアの庇護の下に」を表す「アウスピケ・マリアエ」(AUSPICE MARIAE)
のモノグラムです。マンドーラの下に「リヨン、ペナン作」(Penin, Lyon) の刻印があります。
本品はたいへん良好なコンディションです。拡大写真では色むらがあるように見えますが、肉眼で見ると綺麗です。