ジュアール修道院の小聖画

ノートル=ダム・デュ・フォワイェ 家庭の温もりの聖母 "N-D du Foyer", Juarre 272


111 x 78 mm

フランス   1957年



 ジュアール修道院で刷られた小聖画。ベツレヘムの牛小屋で火にあたる聖家族を描きます。炎から発する温かな光が三人の顔を照らしています。「フォワイェ」(foyer) はフランス語で暖炉、炉辺のことですが、家庭、結婚、愛を象徴します。


 キリストの降誕を描く作品において、光は幼子イエズスから発しているように描かれるのが普通です。この作品は、通常の図像とは異なり、イエズスが炉辺の光に照らされて描かれているのが、たいへん珍しい点です。

 教父エイレナイオス (Irenaeus, c. 130 - 202) の著作に言及があることから、2世紀末頃の成立と考えられる新約外典に、「トマスによるイエスの幼時物語」という書物があります。ギリシア語のほか、ラテン語、シリア語、エチオピア語、古スラブ語等の写本が見つかっており、かなり広い範囲で流布していたことがうかがえます。荒唐無稽な内容のこの外典において、少年イエズスは少しでも気に入らないことがあるとすぐに人を呪い殺すような神通力の怪童として描かれ、当時過酷な迫害を受けていたキリスト教徒たちは、これを読んで溜飲を下げたのだろうと思います。

 しかし実際のイエズスは決して怪童などではなく、ゼルマ・ラーゲルレーヴの作品に描かれているように、純粋無垢なごく普通の少年であったはずです。正統教義によると、イエズスは神であるとともに「完全な人間」でもあり、受肉したイエズスは普通の人間の幼児と同様に、知恵においても少しずつ成長されました。(ルカによる福音書 2:52) 福音記者ルカが「イエスは知恵が増し、背丈も伸び、神と人とに愛された」(ルカ2:52)と書くとき、温かい家庭で両親の愛情に包まれて、健全に育ってゆくひとりの男の子の姿が思い描かれます。





 炉辺の光が幼子イエズスと両親を照らす本作品「ノートル=ダム・デュ・フォワイェ」(Notre-Dame de Foyer)は、幼子イエズスを守り育(はぐく)んだ「家庭の温もり」と「両親の愛情」の視座から聖家族を描くという新しい試みが、美しい芸術作品に結実したものであり、天来のまばゆい光輝に包まれた幼子イエズス、世界球(グロブス・クルーキゲル)を手に天地の主宰者であることを宣言する幼子イエズス等、伝統的なキリスト教美術の図像群とは、鮮烈な対照を為しています。

 裏面には「ジャニーヌ」(女性名)、「ピエール」(男性名)、「1957年7月9日」と書かれています。おそらく結婚の記念品なのでしょう。温かな家庭を築きたいというふたりの願いが、一枚の小聖画に籠められています。


 この小聖画は50年以上前のものですが、たいへん良い保存状態で、特筆すべき問題はありません。良質の中性紙に刷られているため、紙質の劣化は将来も起こりません。別料金にて、額装をご注文いただけます。








小聖画の価格 2,800円 (税込、額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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