稀少な未使用品 《古典的意匠によるクルシフィクス 47.2 x 22.9 mm》 アルマ・クリスティと融合した特徴的光背 マユショルに黒檀風素材を象嵌 フランス 二十世紀前半から中頃
重量 1.7 g
突出部分を含むサイズ 縦 26.5 x 横 16.5 mm 厚さ 3.7 mm
数十年ないし百年近く前に、フランスで制作された古典的クルシフィクス。クルシフィクスとは、十字架にコルプス(キリスト像)を取り付けたもののことです。上部には丸環が取り付けられ、環の切れ目は溶接されてペンダントとなっていますが、シャプレ(数珠、ロザリオ)にも使いやすい大きさです。
十字架は銀色で、素材はおそらくマユショルです。マユショル(仏 maillechort)とは銅、亜鉛、ニッケルの合金で、日本語では洋銀、洋白、白銅などの名称で知られます。信心具や懐中時計ケース、各種什器の素材として使われ、我が国では百円硬貨や五百円硬貨の素材としても知られます。
マユショルは丈夫で艶があり、錆びたり変色したりすることがありません。写真では分かりづらいですが、本品も美しい金属光沢を有します。
十字架の表(おもて)面には、黒檀あるいは黒檀を模した木が象嵌されています。本来ならば木を象嵌すべきこの部分が、黒く塗られているだけのクルシフィクスをよく目にしますが、本品のクロスは本物の象嵌を施してあります。
コルプス(キリスト磔刑像)は打ち出し細工で、素材は銀色の金属です。めっきの剥がれが無いので、マユショルのようにも見えます。しかしながら本品は古い年代にも関わらず未使用品ですので、めっきの剥落が無いのはそのせいかもしれません。コルプスの素材としては、クロムめっきを施したブロンズがよく使われます。
コルプスは象嵌の木とともに、釘で十字架に打ちつけられています。釘はキリストの両手と足台に打たれています。足台に打たれた機能的な釘とは別に、キリストの両足を貫く釘が表現されています。キリストの脇腹に槍傷が無いゆえに、本品の磔刑像はクリストゥス・ドレーンス(羅 CHRISTUS DOLENS)型に分類されます。
本品は十字架が小さいので、ティトゥルス(IESUS CHRISTUS REX IUDAEORUM ユダヤ人の王ナザレのイエス、と書いた札)は略されています。
キリストの頭には茨の冠が巻き付けられ、光背にも大きな茨の冠がキリストの頭部を取り巻いています。本品の光背は三角形に見えますが、本来は菱形であって、菱形の下半分がキリストの体に隠れています。一点から放射する光は、円または球で表現するのが自然と思われます。それにもかかわらず本品の光背が菱形であるのは、光背そのものの形が十字架の象(かたど)りとなっているからです。本品はキリストの聖性の証である光背に、それとは全くそぐわないアルマ・クリスティを重ねることにより、キリスト受難の意味を形象化しています。
キリストは過ぎ越しの子羊であり、自分のものではない罪を贖(あがな)うために受難し給いました。救いはラテン語でレデンプチオー(羅 REDEMPTIO)といいますが、これは買い戻しという意味です。すなわち本来であれば罪を犯した人間がその代価を払うべきですが、罪なきキリストが人間に代わって代価を支払い給うたゆえに、人間が永遠の死から解放されたのです。これは大乗仏教の回向(えこう)に似た考え方です。
上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。
本品のコルプス(キリスト像)はサイズが小さいゆえに、作りが大まかになっている面はありますが、それでも定規の目盛りと比べると、じゅうぶん丁寧に作られていることがお判りいただけます。
上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。
フランスの十字架型ペンダントには、信心具よりもむしろ服飾アクセサリーに属するクロワ・ド・クゥ(仏 une croix de cou)をはじめ、多くの種類があります。クルシフィクスのなかにも装飾的な作例がありますが、本品は装飾とは対極にあって、最も正統的なクルシフィクスの一つと言えます。正統的かつ古典的な意匠が、サイズを超えた重厚感を本品に与えています。
本体価格 6,800円
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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