ダヴィデの星とソロモン朝 エチオピア正教司祭のコプト十字 接吻を受ける祝福の十字架 失蝋法による一点もの 47.8 x 27.6 mm
突出部分を含むサイズ 縦 47.8 x 横 27.6 mm
重量 6.0 g
コプト正教会は福音記者マルコによってエジプトに設立された歴史あるキリスト教会で、エジプトを中心に、リビア、スーダン、南スーダン、エチオピア、エリトリアに多数の信徒を擁します。最古のキリスト教国として知られるエチオピアのコプト教会はエチオピア正教会と呼ばれていますが、信仰の内容はエジプトのコプト正教会とまったく同じで、相互の聖餐に与れる関係にあります。
本品は失蝋法によると思われる手作りの十字架です。おそらく銀製ですが、産業的な大量生産品ではないのでホールマーク（検質印）はありません。上部は蝶番（ちょうつがい）で可動式になっています。本品の二面はいずれも同じ丁寧さで制作されています。上の写真は本品の二面を撮影して並べた合成写真です。商品の在庫点数は、一点です。
本品はエチオピア正教会の司祭が首から提げる十字架で、手で持つ笏状の十字架と同様に、信徒を祝福するために用います。すなわち信徒は本品に接吻することで、神からの祝福を与えられます。
コプト正教会では、四つの枝が福音記者、各末端の三つの突起が三位一体を表す「コプト十字」を使用します。しかるに本品は通常のコプト十字とは異なり、ダヴィデの星（六芒星）の中心に十字架を配します。
本品の意匠にダヴィデの星が含まれるのは、本品が通常のコプト十字ではなく、エチオピア正教会の十字架であるからです。上の写真はブルックリン美術館に収蔵されているコプト十字類で、79.72.6
と 79.72.7 が本品と同様の形をしています。
エチオピアは正式な国名をエチオピア連邦民主共和国と言い、現在は共和制を採っていますが、1974年にハイレ・セラシエ一世が廃位されるまではソロモン朝エチオピアと呼ばれる帝国でした。
ダヴィデの子ソロモン王は、並ぶ者無き知恵の持ち主でした。「列王記 上」十章、及び「歴代誌 下」九章によると、ソロモンの名声を伝え聞いたシェバの女王はエルサレムにソロモンを訪ね、噂が事実に違わぬことを確かめてソロモンを褒めたたえ、互いに贈り物を交わして帰国しました。シェバの位置は旧約聖書に明示されていませんが、おそらくアラビア半島南部かエチオピアにあったと考えられています。
エチオピア正教会の伝承によると、シェバ（エチオピア）の女王はソロモンによって身ごもり、メネリク一世を産みました。紀元前五世紀にはエチオピア北東部にアクスムという王国が興り、九世紀か十世紀まで存続しましたが、アクスム王はソロモンの子メネリク一世の子孫を名乗りました。また
1270年にソロモン朝を開いて 1285年まで在位した初代皇帝イクノ・アムラクは、アクスムの最後の王ディル・ナオドの子孫すなわちソロモンの子孫を名乗りました。それゆえハイレ・セラシエ一世に至るソロモン朝の皇帝たちは、ダヴィデ、ソロモンの子孫であることになります。
上述したように、エジプトの教会とエチオピアの教会はいずれもコプト正教会で、同一の教義を奉じますが、エチオピア教会の十字架である本品にはエチオピア独自の特徴が顕れていることがわかります。
上の写真は本品を男性店主の手に乗せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真よりもひと回り大きなサイズに感じられます。
本品には革紐も金属のチェーンも似合います。環の開口部はおよそ四ミリメートルの内径があり、大きめの留め金でも通ります。
近代の先進国では、ダイ・カスティング（英 die casting）といって、金属の鋳型を用いて鋳造を行います。しかるに本品を注意深く観察すると、表裏の面に対して側面が垂直になっておらず、金型から抜けないことが分かります。それゆえ本品は、おそらく失蝋法」で作られています。
失蝋法では鋳造のたびごとに型を作ります。型を壊さなければ製品を取り出せません。型を一回しか使えない失蝋法は、あらゆる鋳造法の中で最も素朴かつ手間がかかる方法です。このような方法で作られた本品は、銀細工師の手から子供のように産まれた一点ものです。伝統的な技術によって丁寧に手作りされた本品は、大量生産品には望むべくもない味わいを持っています。
本体価格 25,000円
電話 (078-855-2502) またはメール（procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp）にてご注文くださいませ。
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