クリスタル(鉛ガラス)の聖水盤。 並んで浮かぶ天使の前に、シャコ貝形のレセプタクル(聖水受)があるのは、19世紀後半にフランスで製作された宗教彫刻に多いデザインです。
本品はバカラ (Baccarat) による作品で、7センチメートルの奥行があり、たいへん立体的です。透明に仕上げる部分に手作業でパラフィンを塗った後、弗化水素でフロスト加工を施してあります。全体が透明なガラス彫刻に比べると、あたかも聖人伝に登場する奇蹟を起こす聖人や聖遺物にも似て、天上の光に柔らかく包まれ、微光を発するかのようです。
本品は全体的に非常に良好な保存状態で、欠損や亀裂等の問題はありません。鉛ガラスは軟らかいので、釘に掛けるための孔の周囲に多数の小さな疵(きず)があります。またフロスト加工の表面に数か所、小さな疵がありますが、写真に写すのは困難です。また硬水が多いフランスで使われていたため、聖水受にカルシウムが付着しています。瑕疵として特筆するほどでもないこれらの状態につきましては、真正のアンティーク品に必然的に付随するコンディションとしてご理解くださいませ。