優しい印象のパステル・カラーに彩られたフランスの家庭用聖水盤。フランス本土の北東端に近い町デーヴル(Desvres、ノール=パ=ド=カレー地域圏パ=ド=カレー県)にある1906年創業の窯(かま)、ガブリエル・フルマントロー
(Gabriel Fourmantraux) が製作したファイアンス焼です。
表(おもて)面では幼子イエズスが、まるで普通の幼児と変わらない様子で、優しい母に甘えています。幸せに眼を細めた聖母の穏やかな表情が、愛しいわが子を抱く喜びを見る者に伝えます。聖母子の後光は聖水盤の上半分の輪郭を構成しています。また水を入れる部分は聖母のヴェールの延長上にあって、縁は三つの曲線を描いており、ヴェールとの一体感を感じさせるデザインです。この部分は聖母のヴェールと同じくブリュ・マリアル(マリアの色である青)で彩られています。
家庭用聖水盤には鮮やかな原色のエマイユを施したもの、厳粛なデザインのものも多く見られますが、この作品は全体のシルエット、聖母子像のデザイン、色彩のいずれもたいへん柔らかく、家庭のインテリアとしてもなじみやすい聖品となっています。裏面に「デーヴル、フランス」(DESVRES,
FRANCE) の文字、「ジェ・エフ」(GF, Gabriel Fourmantraux) の印があり、製作者のサイン (C Mano) が刻まれています。
表(おもて)面、裏面とも亀裂、欠損、剥落、その他の問題はいっさい無く、たいへん良いコンディションです。