フランスの修道院で修道女の信心業として制作されたソヴガルド。1900年頃の作例です。
ソヴガルドは刷り物である場合が多いですが、本品は三枚の布と六色の刺繍で制作された完全な手作り品です。聖心は赤い布を心臓形に切り取り、上部の十字架、十字架から発する光、白鳩、鳩が背負う十字架、聖心から滴る血を、いずれも細かい刺繍によって表現しています。
本品において、白鳩はキリスト者の魂を表しています。鳩が十字架を背負っているのは、キリストが「自分の十字架を担ってわたしに従わない者は、わたしにふさわしくない」(マタイ
10: 38)とおっしゃったからです。十字ががとても小さいのは、キリストが「わたしの軛(くびき)は負いやすく、わたしの荷は軽い」(マタイ 11:
30)とおっしゃったからです。「聖心」すなわち「キリストの愛」の中に住まう鳩の姿は、使徒パウロが「ガラテヤ人への手紙」 2章 19節から 20節に書いた言葉を思い起こさせます。該当箇所を新共同訳により引用いたします。
わたしは神に対して生きるために、律法に対しては律法によって死んだのです。わたしは、キリストと共に十字架につけられています。生きているのは、もはやわたしではありません。キリストがわたしの内に生きておられるのです。わたしが今、肉において生きているのは、わたしを愛し、わたしのために身を献げられた神の子に対する信仰によるものです。わたしは、神の恵みを無にはしません。もし、人が律法のお陰で義とされるとすれば、それこそ、キリストの死は無意味になってしまいます。 |
聖心と鳩は、いずれも茨の冠に取り巻かれています。茨の冠の内側には、次の言葉がフランス語で書かれています。
J'ai trouvé mon repos dans le Cœur de Jésus. われ、イエスの聖心に安らぎを見い出せり。
本品は日本国内の工房に特注した一点ものの高級フレームに、バーガンディ(ワイン・レッド)のベルベットを使用して額装しました。額装に使用する材料は吟味し、長期保存に悪影響のある物は使っておりません。ソヴガルドの固定方法はマットに押し付けてあるだけで、粘着テープ等はいっさい使用しておりませんので、額を開ければいつでも取り出すことができます。
本品はおよそ百年前に作られた真正のアンティーク品ですが、白い布に変色や染みはほとんどありません。虫食いの孔がいくつかありますが、大切な部分はいずれも破損を免れており、美観上の問題はありません。