シェルの社名入り稀少文字盤 《ロレックス マルコーニ 十五石》 ツートン彫金文字盤にブレゲ数字、ゴシックの針 良好な保存状態の一点 1930年代
1930年代頃に制作された円形ケースの時計。突出部分(ラグと竜頭)を除くケースの直径は、五百円硬貨と同じ 26.5ミリメートルです。
直径 26.5ミリメートルは現代の感覚ではずいぶん小さく感じられますが、これは 1930年代から 40年代の男性用時計のサイズであって、本品も男性用時計です。しかしながらこの時代の男性用時計は小ぶりで上品ですので、女性にも違和感なくお使いいただけます。
時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)、ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計本体の外側)をケース(英 case)といいます。本品のケースはステンレス・スティールでできています。ステンレス・スティールは摩耗することなくムーヴメントを守り、着用する人にアレルギーを惹き起こすこともないので、時計ケースの理想的な素材です。
上の写真は本品の裏側で、ケース素材名と、ケースの型式及びシリアル番号と思われる数字が刻印されています。「ステンレス・スティール」(英 STAINLESS
STEEL)の刻印は、ケース全体が無垢のステンレス・スティールであることを示します。裏蓋のみがステンレス・スティールであれば、「ステンレス・スティール・バック」(英
STAINLESS STEEL BACK ステンレス・スティール製裏蓋)と刻印されます。
本品は手巻き式で、一日一回、手動で竜頭(りゅうず)を回転させてぜんまいを巻き上げる必要があります。時計の三時の位置、上の写真で言えば手前の中央付近に、ケース外側に取り付けられた円盤型のツマミが見えます。これが竜頭(りゅうず)で、回転させるときに滑らないように、周囲に刻み目が付けられています。
本品の竜頭はたいへん扱いやすく、ぜんまいを巻くのはとても簡単で誰にでもできますから、初めての方でもまったく心配いりません。また時計を使わない日にぜんまいを巻く必要はありません。
時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を、文字盤といいます。本品の文字盤は半艶消しのライト・シルバーで、経年により均一で美しい古色を得ています。文字盤の上部に、シェル(SHELL)のロゴが書かれています。このシェルはおそらくシェル石油のことで、自社の役員か技術者が使う時計を、ロレックスに発注したのでしょう。本品の文字盤は八十年以上の歳月を経ているにも関わらず、十分に綺麗な状態です。
文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとの数字をインデックス(英 index)といいます。文字盤のインデックス部分には同心円の彫金があり、平板な部分とは色と艶も違っていて、上品なツートン文字盤となっています。
時計のインデックスには、年代毎に明確な流行があります。十九世紀の懐中時計はほとんどがバー・インデックス(線状のインデックス)で、稀にローマ数字のインデックスが見られます。アラビア数字のインデックスは、ほとんどありません。しかるに懐中時計との違いを際立たせるため、1910年代に誕生した腕時計にはアラビア数字インデックスが採用されました。1920年代になるとアラビア数字は角ばったアール・デコ様式の字体になり、1930年代になると数字は丸みを取り戻します。本品は
1930年代頃の時計ですので、数字が優しい丸みを帯びています。これはブレゲ数字と呼ばれる典雅な字体です。
本品の時針と分針は、古い建物壁面の大時計を想起させるゴシック風の形状です。六時の位置には小文字盤があって、可愛らしい針が回っています。これはスモール・セカンド・ハンドと呼ばれる小秒針です。
現代の時計は中三針(なかさんしん)式、あるいはセンター・セカンド式と言って、文字盤の中央に秒針が付いています。中三針式(センター・セカンド式)のムーヴメントは作るのが難しく、1960年代になってようやく普及しました。それ以前の時計は小秒針式(スモール・セカンド式)で、六時の位置に小さな秒針が付きます。本品もそのような時計の一つです。
三本の針をよく見ると、少し青みがかっています。これは青焼き(ブルー・スティール)といって、鋼鉄製の針を加熱し、酸化被膜を形成したものです。青焼きは錆の発生を抑えるための処理ですが、見た目も美しく、文字盤に彩(いろどり)を添えています。
バンドを取り付けるための突起を、ラグ(英 lugs)といいます。本品は現代の時計と同じく十二時側と六時側に二本ずつのラグが突出し、ばね棒と呼ばれる部品を使って、革や金属でできた幅広のバンドを取り付けるようになっています。商品写真は黒い革バンドを取り付けて撮影しましたが、取り付け部の幅が十三ミリメートルのバンドであれば、他の色の革バンドや布バンド、金属製バンドに取り換えることが出来ます。
アンティーク時計がオリジナルの状態かどうか、すなわちその時計が新品として工場を出荷されたときの状態と同じかどうかを問題にする人がいますが、そのようなことを気にするのはまったく無意味です。アンティーク時計は現代の時計に比べて耐久性がはるかに高く、作られてから長い年月を経ています。長年愛用されるうちにはほぼ確実に修理され、様々な部品が置き換わっていますが、それはいわば時計の健康を保つために必要な処置であって、喩えていえば人が虫歯を治療したり、眼鏡やコンタクトレンズを着用したりするのとまったく同じことです。特にバンドは消耗品ですから、新品時のバンドがそのまま使われることはありません。
アンティーク時計とバンドの組み合わせに必然性は無く、以前の所有者が自分のサイズや好みに合ったものを付けています。バンドは消耗品ですので、傷んでいれば取り替える必要がありますし、当時のバンドが使える状態で残っている場合でも、自分のサイズや好みに合わなければ取り替えて構いません。それに、時計会社はそもそもバンドを作っていません。バンドの社名が捺されている場合でも、それはバンドのメーカーが発注元の社名を入れて納入しただけのことです。したがってアンティーク時計のバンドに関して、オリジナルにこだわる必要はまったくありません。本品にも新品の革バンドを取り付けています。
時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)といいます。本品のムーヴメント、マルコーニ キャリバー 200です。マルコーニ キャリバー
200は電池ではなくぜんまいで動いています。ムーヴメントには、マルコーニ(MARCONI)、十五石(FIFTEEN JEWELS)、三姿勢差について歩度調整済み(TIMED
3 POSITIONS)、キャリバー名(200)の刻印があります。
良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはモース硬度 9 と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)ですので、高級時計の部品として使用されます。上の写真で赤く写っているのがルビーです。ルビーは四個しか入っていないように見えますが、写真に写っていない文字盤下の地板やムーヴメントの内部に入っていたり、箇所によって二重に入っていたりして、全部で十五個のルビ-が使われています。
本品のようにぜんまいで動く時計を機械式時計といいます。電池で動くクォーツ式時計は 1970年代から使われ始めます。本品が製作された 1920年代にクォーツ式腕時計はまだ存在せず、時計は全てぜんまいで動いていました。
秒針があるクォーツ式時計を耳に当てると、秒針を動かすステップ・モーターの音が一秒ごとにチッ、チッ、チッ … と聞こえます。デジタル式など秒針が無いクォーツ式時計を耳に当てると、何の音も聞こえません。本品のような機械式時計を耳に当てると、小人が鈴を振っているような小さく可愛らしい音が、チクタクチクタクチクタク…と連続して聞こえてきます。
上の写真は一枚目で男性が、二枚目で女性が、本品を着用しています。
1950年の時計と現代の時計を比べると、動く仕組みが異なるだけでなく、サイズの点でも大きく異なります。1930年代から 1970年代までは男性用、女性用ともに現代よりも小さな時計が流行していました。本品は五百円硬貨と同じサイズですが、男性用時計です。この時代の女性用時計は一円硬貨ほどのサイズでした。しかしながら本品を初めとする男性用時計は現代の男性用時計よりも小さく、女性にも違和感なくご着用いただけます。
ロレックス・マルコーニは珍しい時計であるためにたいへん高価ですが、本品は安く仕入れることができましたので、こなれた価格でお譲りいたします。本品は我が国でも数少ないサーティファイド・マスター・ウォッチメイカー(C.M.W. 公認高級時計師)に整備していただきました。ひげぜんまいの状態も良く、天符は大きな振り角で順調に動作しています。デリケートなイメージのアンティーク時計ですが、丁寧に取り扱えば、日常使用も十分に可能です。
本品は部品が在庫していないので現状売りと表示していますが、これは時計お買い上げ後の不具合に対応しないという意味ではございません。現状売りの時計であっても、アンティークアナスタシアでは出来る限りの修理に対応しております。お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十二回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。
本体価格 218,000円 現状売り
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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