アール・デコそのもののような腕時計 《クロスビー 男女兼用》 美しい古色の銅色文字盤 格調高いローマ数字インデックス 1940年代


ケースのサイズ  29 x 22ミリメートル (ラグと竜頭を除く概寸)

最大の厚み  10ミリメートル (風防と裏蓋を含む概寸)



 いまから八十年前、1940年代のスイスで製作され、アメリカに輸出された腕時計。元々は男性用ですが、二十世紀中頃の腕時計は現代のものに比べてサイズが小さく、女性にもお召しいただけます。またこの時代の時計は電池ではなく、ぜんまいで動く機械式時計です。ぜんまいを巻いて耳に当てると、チクタクチクタクという可愛らしい音が聞こえます。





 時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)と呼びます。ムーヴメントを保護する容器、すなわち時計本体の外側に見えている金属製の部分をケース(英 case)と呼びます。時計ケースの形状には、時代ごとに特徴があります。現代の時計はほとんどが円形ケースですが、1940年代には四角いケースが流行しました。本品もその一つで、クッション型のケースにトノー型(樽型)のムーヴメントを搭載しています。





 バンドを取り付ける突起を、ラグと呼びます。ラグは十二時側と六時側に二か所ずつ突出し、バンドはバネ棒で取り付けるようになっています。ラグ間の幅(バンド取り付け部の幅)は十四ミリメートルで、これは1940年代に流行した四角い男性用時計に標準的なサイズです。

 本品のラグは鴛鴦(おしどり)の思い羽に似た優雅な形で、一段ずつ後退することにより、バンドを留める実用部分のラグに美しい造形を与えています。





 三時の位置に付いているツマミを、竜頭(りゅうず)といいます。機械式時計のぜんまいは、竜頭を時計回りに回転させることで巻き上げます。竜頭の操作は簡単で、誰でも扱うことが出来ます。初めての方でも心配要りません。

 クォーツ時計(現代の電池式時計)はぜんまいを巻く必要が無いので、たいへん小さな竜頭が付いています。クォーツ時計で竜頭を操作するのは、止まっていた時計の電池を入れ替えた場合など、時刻合わせが必要なときだけです。これに対して手巻き時計は竜頭でぜんまいを巻き上げますので、操作しやすいサイズのしっかりとした竜頭が付いています。





 時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を、文字盤(もじばん)または文地板(もじいた)といいます。本品のようにピンク・ゴールドの時計には、コパトーン(銅色)の文字盤が採用されました。本品の文字盤も銅色のツートン・カラーとなっています。

 文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとの目印をインデックスといいます。インデックスには年代毎に明確な流行があります。現代の腕時計はバー・インデックスと呼ばれるシンプルな形を採用していて、これは 1960年代のインデックスが復活したものです。これに対して二十世紀初頭から1940年代までは、数字のインデックスが使用されました。数字のインデックスはほとんどの場合アラビア数字でしたが、本品は珍しいことにローマ数字を採用しています。





 本品の時針と分針は、二十世紀半ばの腕時計によく採用されたモダン型です。六時の位置には小文字盤があって、可愛らしい針が回っています。これはスモール・セカンド・ハンドと呼ばれる小秒針です。

 現代の時計は中三針(なかさんしん)式、あるいはセンター・セカンド式と言って、文字盤の中央に秒針が付いています。中三針式(センター・セカンド式)のムーヴメントは作るのが難しく、1960年代になってようやく普及しました。それ以前の時計は小秒針式(スモール・セカンド式)で、六時の位置に小さな秒針が付きます。本品もそのような時計の一つです。





 本品のケースの材質は、十カラットのピンク・ゴールドによるロールド・ゴールド・プレートです。上の写真は本品のベゼル側面で、"10K R.G.P." の刻印があります。

 ロールド・ゴールド・プレートは板状の金をベース・メタルに張り付けたもので、ヴィンテージ時計(アンティーク時計)のケースに最もよく使われる素材です。現代の金めっき(エレクトロプレート)に比べると、ロールド・ゴールド・プレートは十数倍の厚みがあって、摩耗に強く、見た目にも高級感があります。本品のケースに張られている金は十カラット・ゴールド(純度 10/24のゴールド 十金)で、十八金等に比べると、金(金合金)自体が格段に大きな強度を有します。本品は八十年前の時計であるにも関わらず、金の剥がれは見られません。





 上の写真は本品の裏蓋を外し、その内側を撮影しています。裏蓋内側の窪みには、ムーヴメントが収まります。

 腕時計のケースが摩滅しやすいのは、手首と擦れ合う裏側です。裏蓋が摩滅して孔が開くと、精密機械であるムーヴメントが汗や埃に晒されて、時計は停止します。このような事態を防ぐために、本品の裏蓋はステンレス・スティールでできています。ステンレス・スティールは摩滅せず、金属アレルギーも起こしにくいので、理想的なケース素材の一つです。

 上の写真に見える油性ペンの書き込みは、オーバーホールの印です。本品は我が国でも数少ないサーティファイド・マスター・ウォッチメイカー(C.M.W. 公認高級時計師)に整備していただき、順調に動作しています。





 なお最も摩滅しやすいのは裏側の突出部分であるラグですが、本品は八十年前の時計であるにも関わらず、特筆すべき摩滅が見当たりません。当時のロールド・ゴールド・プレートが如何に高品質であったかが窺えます。





 本品の文字盤は完全なアール・デコ様式で、明度が異なる二色のコパトーンとなっています。本品のケースはクッション型ですが、文字盤全体の形とインデックス領域の形状も、ケースと同じクッション型に揃えられています。小秒針の領域もクッション型です。

 上の写真は実物よりもはるかに大きなサイズですので、文字盤の小きずや色むらがよく識別できます。しかしながら実物は写真よりもずっと小さく、さらに風防(ガラス)越しに見ますから、本品の文字盤は上の拡大写真よりもずっと綺麗に見えます。

 アンティーク品が長い年月をかけて獲得した風合いを、古色(パティナ)といいます。古色は真正のアンティーク品ならではの風合いで、アンティーク風に作った現代のレプリカには見られません。筆者(広川)はアンティーク品の古色が好きで、保存状態が良すぎるとむしろ物足りなく思うぐらいですので、本品の文字盤には大きな魅力を感じます。





 上の写真は本品が搭載する 7 3/4 x 11リーニュの手巻きムーヴメント、ETA735です。ETA 735はドレス・ウォッチ用に開発された機械で、製作年代は 1936年から 1949年です。

 本品はスイスからアメリカ合衆国に輸出され、クロスビーのブランド名で販売されたものですが、ETA735はアメリカ最大手のブローバによっても採用され、キャリバー 7AK 及び7APとして数々の美しい時計を産み出しました。筆者(広川)の考えによると、ETA 735は 1930 - 40年代にスイスで製作されたトノー型ムーヴメントのうち、最もすぐれた機種のひとつです。





 機械式時計はぜんまいを巻いて放置するとやがて止まりますが、しばらく使わないのであればそのまま放っておいて構いません。クォーツ式時計を長期間使わずに放置すると、古い電池が液漏れを起こして時計が壊れます。しかしながら機械式時計には電池が入っていないので、何十年放置しても壊れません。ただし極端に長く放置すると潤滑油が固まり、分解掃除が必要になります。数年に一度の割合で、分解掃除はいずれにせよ必要になりますが、手首に装着しない場合でも、ときどきぜんまいを巻いて動かしてやると、潤滑油が固まりにくくなります。











 本品に限らずアンティーク時計全般に共通していえることですが、時計のメーカーとバンドのメーカーは別です。アンティーク時計に付いているバンドは、たまたまその時計に取り付けられているだけのことで、時計とバンドの組み合わせに必然性はありません。

 本品の場合も事情は同じで、バンドの種類や色はお好みに合うものをお使いいただけます。バンドの色を変更すると、ずいぶん雰囲気が変わります。





 1930年代から 1940年代にかけて、スリムで四角い時計が流行しました。本品もそのような時計のひとつです。この時代に製作された四角い時計は、たいていの場合、ラグ間の距離、すなわちバンド幅が十四ミリメートルです。本品のバンド幅も十四ミリメートルです。

 商品写真はこげ茶のバンドで撮影しましたが、幅十四ミリメートルのバンドであれば、お好みの色、材質のバンドに容易に交換できます。当店に在庫するバンドであれば、お好きなものに無料で交換してお渡しいたします。

 上の写真は男性による着用例で、幅十四ミリメートルのバンドを使用しています。幅十四ミリメートルの革バンドは現代で言えば女性用ですので、男性が装着するには短い場合があります。上の写真でもいちばん外側の穴を使用しています。幅十四ミリメートルの革バンドが短すぎる場合は、幅十八メートルの革バンド末端を左右二ミリメートルずつ切り欠けば、男性でも楽に着用できます。





 上の写真ではピンクゴールド色の金属製伸縮バンドを使用しています。このバンドはもともと男性用ですので、充分な長さがあります。

 ピンクゴールド色のバンドは、現在では入手がほぼ不可能ですが、当店アンティークアナスタシアでは、ヴィンテージ(アンティーク)のピンクゴールド色バンドが百本ほど在庫しています。







 本品はもともと男性用として作られた時計ですが、アンティーク時計は男性用であっても現代のものほど大きくないので、女性にもお使いいただけます。上の写真二枚は女性による着用例です。デリケートなイメージのアンティーク時計ですが、丁寧に取り扱えば、日常使用も十分に可能です。当店ではお買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、安心してお買い上げくださいませ。

 アンティーク時計はどこの店でも修理に対応しない「現状売り」が普通ですが、当店ではアンティーク時計の修理が可能です。本品に関しても、当店では ETA 735の修理が必要となった場合に備え、貴重な部品を保管し、きちんと管理しています。アンティーク時計の修理等、当店が取り扱う時計につきましては、こちらをご覧ください。


 当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(三回払い、六回払い、十回払いなど。利息手数料なし)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 78,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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