上品に安定した印象を与える正六角形の宝飾時計。
辺の長さと角度がすべて等しい「正多角形」のうち、最も基本的なものは正三角形ですが、これを六つ組み合わせてできるのが、やはり正多角形である正六角形です。つまり正六角形は、自ら正多角形であると同時に、基本の正多角形である正三角形を六つ、内に含んでいるのです。このように特別な性質を持つ正六角形は、美しいバランスを内に秘めた神秘的な図形であり、調和のシンボルと考えられています。
ラグ(バンドを取り付ける突起)を目立たせないために、ワイア状のホワイト・ゴールドによる軽やかなV字デザインがあり、華奢(きゃしゃ)な時計が手首に浮かんでいるように見えます。12時側と6時側に3個ずつ、計6個のダイヤモンドがあしらわれています。これらはラインストーン(クリスタル製模造ダイア)ではなく、綺麗にカットされた本物の天然ダイヤモンドで、きちんとプロング・セット(爪留め)されています。
ベゼルには肉眼で見えないほど細かいヘリンボーン(杉綾織)文様の彫金が施され、光を柔らかく反射します。現代の高級宝飾時計のケースは製作が容易な光沢仕上げばかりです。このように手の込んだ細工は、時計が現在とは比較にならないほど高価であった時代のヴィンテージ・ウォッチならではです。
たいへん珍しいことに、この時計の文字盤は緑色の七宝(しっぽう、ガラスによるエマイユ)でできています。本品の七宝は深い透明感があって、星を散りばめた神秘性を湛(たた)えています。緑色は生命力の象徴であり、希望、喜び、明るい前途の象徴、また富の象徴でもあります。緑色の意味に関する詳しい解説は、こちらをクリックしてください。
【下・参考画像】 ヤン・ファン・アイク 「ジョヴァンニ・アルノルフィーニ夫妻像」(1434年) 花嫁は緑のウェディング・ドレスを着ています。
この時代の時計は現代よりもずっと小ぶりで、女性用時計は一円硬貨よりも小さなサイズです。現代の時計は幅広の革バンドを使用しますが、女性用アンティーク・ウォッチはラグ(バンドを取り付ける突起)が時計の12時側と6時側にひとつづつある「センター・ラグ」式です。「センター・ラグ」式のヴィンテージ・ウォッチはバンドの幅が狭く、小さな時計がいっそう華奢に見えます。
下の写真では、サイズ比較のために500円硬貨と1円硬貨を時計の下に置いてみました。500円硬貨の直径は26.5ミリメートル、1円硬貨の直径は20ミリメートル、時計ケースの六角形の対角線は17ミリメートルです。
【下】 現代の時計とのサイズ比較。左はアクテオ。
アンティーク・ウォッチのバンドが「オリジナル」かどうかは、まったく気にする必要がありません。時計メーカーはバンドまで作っていませんので、アンティーク時計店が入手した段階で付いていた「オリジナル」のバンドだとしても、以前の所有者が自分の好みやサイズにしたがって、たまたまそのバンドを取り付けていたというだけのことであって、その組み合わせがベストとは限りません。本品の場合、もともと金属製のバンドが付いていましたが、コード・バンドに取り替えると、時計の華奢さと繊細なラグの作りがいっそう際立ち、ダイヤモンドの輝きも強調されます。
【下】 もともと付いていた金属製バンド(左)を、コード・バンド(右)に取り替えてみました。
バンドの交換はほとんどの場合無料で承ります。ヴィンテージのファブリック製コード・バンドは、黒、グレー、バーガンディ(ワイン色)、ブラウンを新品でご用意しております。手芸用品店等で売っている革ひもを使えば、紺色や緑色等、自由に色を変えることもできます。また金属製バンドも様々な種類のものをご用意しております。
バンドは同じ物を壊れるまで使い切る必要は無く、ときどき取り替えると時計全体の雰囲気ががらりと変わり、何通りもの楽しみかたができます。バンドにつきましては、こちらをご覧くださいませ。
本品はブロバ社の最高級モデル「ダイアデム」(Diadem) と同じスイス製手巻ムーヴメント、ブロバ・キャリバー6CDを使用しています。
電池ではなくぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいますが、良質の機械式時計のムーヴメント(時計内部の機械)には、重要な部品の摩耗を防ぐために、ルビーが使われています。ルビーとサファイアはコランダムという鉱物で、いずれもモース硬度「9」と、たいへん硬い宝石です。ルビーを使うのが望ましい箇所は15箇所あって、そのすべてにルビーを入れると17個の石が使われることになります。
17石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル」(high-jewel) と呼ばれる高級品です。1960年代、70年代は機械式時計の技術レベルが頂点に達した時代であり、特に「ハイ・ジュエル」の時計は現代のものと同等の性能を備えています。
アンティーク・ウォッチ、ヴィンテージ・ウォッチは、部品が手に入らないために修理できないのが普通ですが、当店では修理に対応しております。ご安心くださいませ。当店の修理対応に関しましては、こちらをご覧ください。
時計の裏蓋には、ケースの素材が14Kホワイト・ゴールドであることを示す "14K" の刻印、ブロバ社の社名とケースの製造年を示す
"N1" の刻印があります。"N1" は1971年の意味です。その下には、本品のケースに固有の、世界にひとつのシリアル番号
"99435" が刻まれています。
ダイヤモンドがバンドにまで付いたカクテル・ウォッチは使用するシーンが限られてしまいますが、小ぶりのダイヤモンドを上品にあしらった本品には、普段使いしていただきたい上質感があります。サイズが小さなヴィンテージ宝飾時計は、和服やドレスを含め、どのような服装にもマッチします。
日常使いが可能で、日々の生活に潤いと上質の華やぎを与えてくれる「一点もの」、あらゆる華やかな場にもふさわしい「一点もの」を、ぜひ生涯の伴侶にお選びくださいませ。