竜頭(りゅうず)が取れた腕時計があるので修理して欲しいというご依頼を受けました。本当に竜頭が取れただけであれば、修理は簡単です。竜頭にはある程度の汎用性があるので、竜真(竜頭に取り付ける心棒)の直径にちょうど合うサイズの穴があいている竜頭に竜真をねじ込めば修理は完了します。

 ただしお客様が「竜頭が取れている」とおっしゃる場合、竜真もいっしょに紛失していることが多く、さらに裏押さえが折れていることもあります。こうなるとやっかいです。竜真も裏押さえも、他の時計部品と同様に、サイズと形状がキャリバー(機械の種類)によって厳密に決まっており、他のキャリバー用のものを流用することはできません。五十年以上も前の部品が二点必要になるのです。

 修理するのはこの時計です。1950年代後半頃のスイス製です。





 ケースの横から観察すると、竜真が突き出しているべき位置には穴があるだけです。やはり竜真ごと無くなっています。





 ケースを開けると 7 3/4 リーニュの丸型ムーヴメント、フォンテンメロン社製キャリバー34 が出てきました。錆びも無く美しいコンディションです。天真も折れておらず、ひげぜんまいに巻き乱れもありません。







 竜真が抜け落ちている場合、オシドリネジが緩んでいるだけであれば竜真だけで修理できますが、裏押さえ(カンヌキやオシドリを押さえる部品)が折れていることがよくあります。その場合は裏押さえも交換する必要があります。

 文字盤を外してみると、やはり裏押さえが折れています。キチ車、鼓車、カンヌキバネは問題無さそうです。





 フォンテンメロン キャリバー 34 の裏押さえは、キャリバー 32 と互換性があります。







 キャリバー 34 の竜真は上の段の真ん中あたり、6番のボトルに入っています。





 ケースの形状や竜頭の穴のサイズが異なっても対応できるように、同じキャリバー 34 の竜真にもいくつかのバリエーションを用意しております。





 新しい竜頭、竜真、裏押さえを取り付けました。少し巻き上げてみると、調子良く動き出しました。天符の振り角も大きく、すばらしく良好な状態です。あとはオーバーホールをして修理完了です。







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