機械式時計の原理 調速機(振り子と天符)の役割
ピサ司教座聖堂
1583年、ガリレオ・ガリレイ (Galileo Galilei, 1564 - 1642)
は、教会の天井から吊り下げられたランプが揺れるのを観察して、機械式時計の原理を発見したと言われています。すなわちガリレオは、左右に揺れるランプが一往復するのにかかる時間を自分の脈拍で測定しました。そしてランプが大きく揺れているときと、小さく揺れているときでは、一往復するのにかかる時間がまったく同じであることに気付いたのです。これが「振り子の等時性」と呼ばれる原理です。
この「振り子の等時性」を利用して作られたのが、最初の機械式時計である「振り子時計」です。振り子時計を実際に作ったのは、オランダの物理学者ホイヘンス(Christiaan
Huygens, 1629 - 1695)
で、1656年のことでした。
振り子時計で最も重要な部品は、振り子です。最も重要であるどころか、振り子こそが時計そのものなのです。他の部品(輪列、文字盤、針)はすべて、振り子が往復した回数を表示するために、振り子に付加されたカウンター(数とり器)に過ぎません。
一定の周期で振動する振り子は、時計ムーヴメントにおいて、「調速機」という役割を果たします。「調速」とは「速さを調(ととの)える」という意味です。
ところで振り子時計は傾けることができません。時計を傾けると、振り子の動きが止まってしまうからです。したがって携帯用時計(ウォッチ)を作るためには、振り子と同様に一定の周期で振動し、傾けても動きが止まらないものを見つける必要があります。1654年、イギリスの博物学者ロバート・フック
(Robert Hooke, 1635 - 1703) は、ひげぜんまいがまさにこのような性質を有することに気付きました。
ひげぜんまいとは、下の写真に写っている毛髪のように細いぜんまいです。ひげぜんまいの外端を固定すると、天符(てんぷ 写真に写っている部品全体のこと)は一方向に回り続けるのではなく、あたかも振り子が往復するように、一定の周期で回転の方向を切り替えます。
ホイヘンスはフックとは別に懈怠用時計の研究をしていましたが、1675年、ひげぜんまいの等時性を利用し、ひげぜんまいの天符を調速機として搭載した懐中時計を製作しました。これが最初の携帯用時計です。
天符は「ひげぜんまい」によって、振り子と同等の等時性を有します。したがってひげぜんまいの天符をクロックに使うと、振り子の代わりになります。またひげぜんまいを使った天符は、振り子とは違って、傾けても止まりません。それゆえひげぜんまいの天符はウォッチにも使うことができます。
ホイヘンスの天符式携帯用時計は、二十世紀後半にジラール・ペルゴ社のクォーツ時計、ブローバ社のアキュトロン(音叉時計)、セイコーのエルニクス(電子天符式時計)が出現するまで、およそ三百年に亙って使われ続けることになります。
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