アール・デコ 無銘ランプ 《リジューの聖テレーズ》


台座 190 x 90 mm  高さ 280mm (概寸)

フランス  1925 - 1930年頃


 インタリオ(陰刻)の技法でリジューの聖テレーズを表現したガラス像にアールデコ様式の台座を取り付けたランプ。

 リジューの聖テレーズ(1873/1/2―1897/9/30)は、フランスをはじめ世界でも最も慕われている聖女のひとりです。1886年のクリスマスの夜に宗教的回心を体験し、1888年からはカルメル会の修道女として神への愛と祈り、奉仕にその生涯を捧げ、1897年、結核のために24歳の若さで天に召されました。
 テレーズは1925年にローマ教皇ピウス11世によって聖人とされ、1944年にピウス12世によりジャンヌ・ダルクとともにフランスの守護聖女と宣言され、さらに1997年にはヨハネス・パウルス2世によって教会博士とされました。聖テレーズの祝日は10月1日です。
 テレーズは地上で祈る人たちのために天国から薔薇の花を降らせると約束したので、親しみを込めて「小さき花の聖テレーズ」と呼ばれ、その画像には薔薇の花があしらわれます。

 このランプにはメーカーの刻印はありませんが、同一のガラス像を使用した別の作品(販売済み)には、ガラス板の縁にドームの刻印がありましたので、このランプもドーム製と考えられます。

 ガラス工房ドームの歴史は、普仏戦争のときにアルザスを逃れてナンシーに定住し、ガラス工場の経営に関わったジャン・ドーム(1825 - 1885)に始まります。経営難の工場を引き継いだジャン・ドームは、長男オーギュストとともに「ナンシーガラス工場」を立て直し、ジャンの死後にはもう一人の息子アントナンも経営に加わりました。
 ドームのガラス工場は時計用ガラスや窓ガラスなど実用的な製品を作っていましたが、1894年にガラス工房を設立したエミール・ガレが、1889年、パリの万国博覧会で作品を展示すると、アントナン・ドームは彼の美しい作品に衝撃を受け、以後芸術的なガラス作品の製作と新しい技法の研究に軸足を移します。
 アントナンは電気を利用したランプの製作に強い関心を示し、1900年のパリ万博では多色のガラスが美しく輝くランプを出品して、グランプリを獲得します。1900年以降、ドームの工房はガラス工芸の世界をリードすることになります。
 第一次世界大戦が始まるとドームは芸術品の製作を中断し、医療用ガラス製品を作りますが、大戦後にはオーギュストの息子ポールによって、ドームのアール・デコ・ガラス製品は不動の地位を築きます。ドーム社に関わったのはガラス作家だけでなく、世界的に有名な鉄製品の工芸作家、エドガー・ブラントも数々の美しいランプを始め、優れた作品製作に貢献しています。

 ポール・ドームは第二次世界大戦中にドイツの強制収容所でその生涯を閉じます。ドーム社は現在でも創業者一族のもとでガラス製品を作り続けていますが、その活躍が最も目覚しく華やかであったのはオーギュスト、アントナン、ポールの時代、すなわち1890年から1930年までと言えるでしょう。





432,000円

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