天然宝石の品質にはジェム・クラス、ジュエリー・クラス、アクセサリー・クラスの三段階があります。コランダム（サファイア）を例に取ります。
ジェム・クラスのサファイア 当店の商品です。インクルージョン（内包物）が非常に少なく、表面及び内部に瑕（きず）がありません。スミレ色がかった鮮やかな青色をしています。1.91カラット 84万円 （枠付）
ジェム・クラスのゴールデン・サファイア。4.07カラット 42万円（裸石） 当店の商品。
ジェム・クラスのパープル・サファイア。1.75カラット 157,500円（裸石） 当店の商品。
ジュエリー・クラスのサファイア 当店の商品です。インクルージョンは少なく綺麗な石です。色は暗めで、最も高い値段が付く発色ではありませんが、十分にジュエリーに使えるサファイアです。0.89 カラット 47,000円
アクセサリー・クラスのサファイア 当店の商品です。インクルージョンが多いですが不透明ではなく、大きなサイズです。2個の合計 3.84 カラット 68,000円
規格外のサファイア いずれもサンプル（非売品）です。
7.2 x 5.3 mm 1.00カラット 既製の枠を使えるちょうどよいサイズで、クラリティ、色とも良いのですが、惜しいことに亀裂が入っています。アクセサリー・クラスと規格外品のボーダーライン上にある石です。
ほとんどの人は肉眼ではこの亀裂に気付きませんし、デザインによっては枠で隠すことも可能ですが、当店のジュエリー用としては不合格です。
実物大下の写真はアクセサリーにもならない完全に規格外のサファイアです。不透明で、研磨しても透明にならないのはもちろんのこと、スター・サファイアにもなりません。採掘されるサファイアのほとんどは、このような石です。
サファイアの場合、1000個採掘されたうち、ジェム・クラスは1個、ジュエリー・クラスは4個、アクセサリー・クラスは45個、規格外のものが950個です。（下図）
ジェム・クラス、ジュエリー・クラスの石は、ファイン・ジュエリーに使用されます。
アクセサリー・クラスの石は比較的手ごろな価格帯のジュエリー、アクセサリーに使用されます。大量に入手可能な小さめサイズの石は、ファッションブランドなど大手メーカーの量産品に使われます。
宝石質でない完全に規格外の石は産業用に使われます。ダイヤモンドやサファイアは固いので、ドリルの刃や研磨剤になります。アパタイトも粉砕して練り歯磨き等に入れられます。スファレライトは砕いて亜鉛を取り出します。
時計用ダイヤモンドについて
宝石質であっても瑕（きず）のためにジュエリーにならない石は、宝飾時計に使われます。宝飾時計に使われる石はほとんどがダイヤモンドで、この宝石の特性として輝きが非常に強いために、肉眼では瑕に気付きません。これらのダイヤモンドは「時計用ダイヤモンド」とも呼ぶべきものであり、ジュエリー用のダイヤモンドとは品質が異なります。
下の宝飾時計にはたいへん大きなダイヤモンドが6個使用されています。肉眼で見ると、いずれのダイヤモンドもたいへん美しくきらきらと輝いています。
スイス製宝飾時計 294,000円それぞれのダイヤモンドの品質を顕微鏡で観察してみます。
まず12時側のダイヤモンドを顕微鏡で点検します。
Ａの石にはクラウン側の内部に亀裂が入っています。この亀裂は石を光源に対して特定の角度に傾けた場合にのみ、顕微鏡で確認できます。亀裂は表面に達しておらず、肉眼で見てもまったくわかりません。
ＢとＣの石にはクラウン側に瑕があります。これらはダイヤモンド結晶の成長過程で表面に生じる三角形の凹みがカットで除去しきれなかったものです。天然のダイヤモンド結晶は必ずしも教科書に載っているような正八面体ではありませんし、内部にインクルージョンや亀裂もありますから、カットしても常に理想的な結果が実現できるとは限りません。
次に6時側のダイヤモンドを点検します。
Ｄ、Ｅ、Ｆのいずれにも、クラウン側に瑕があります。この瑕はダイヤモンド結晶表面の凹みに由来するものであり、これらの石が正真正銘の天然ダイヤモンドである証しです。ジュエリーには使えませんが、時計用ダイヤモンドとしては十分なクオリティです。
ちなみにジェム・クラス、ジュエリー・クラスに分類される無瑕のダイヤモンドを時計に使用するメーカーも、少数ながら存在します。ブロバ社はそのようなメーカーのひとつです。商品を見るには各画像をクリックしてください。
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